地域再生に向け問われる百貨店の活性化
地域経済の核である地域百貨店が相次いで閉店している。少子高齢化や郊外のロードサイトの大型商業施設の進出に加え新型コロナウイルス感染症も直撃している。こうした中、経済産業省が、百貨店の事業を発展させるための課題を検討する「百貨店研究会」を立ち上げ、検討を始めた。街の賑わいを維持するために百貨店の活性化は不可欠だ。
地方都市を中心に近年、百貨店が相次いで閉店している。2020年は、大沼山形本店や新潟三越、そごう徳島店、高島屋港南台店など12店が閉店。21年はすでに丸広百貨店日高店、そごう川口店が閉店したほか、今後、閉店を予定している百貨店もある。
百貨店の売り上げは、1990年代の9兆円がピークで、近年は6兆円弱まで落ち込んでいる。売り上げの主力製品は衣料品で、かつては全体の4割を占めていたが、近年はこの衣料品の売り上げの減少が著しくなっているという。
一方、1997年に143.5兆円だった小売業全体の売り上げは2019年でも145兆円と堅調に推移している。コンビニや通信販売が順調に売り上げを伸ばす中で、百貨店が右肩下がりになっているという構図だ。
こうした百貨店が直面していると考えられる課題は様々で、経産省は①少子高齢化②環境保全や社会の持続可能性に関する要請③情報技術の導入の遅れ④コロナ禍を契機とした消費者行動の変化-の4つに整理している。
例えば、少子高齢化は商圏人口の減少や顧客の高齢化となるし、労働人口の確保も難しくなっている。また、新型コロナでリアル店舗への集客が困難になり、対面販売という百貨店ならではの来店客への高付加価値サービスの提供が発揮できなくなっている。
その一方で、百貨店のECの立ち遅れが顕著で、売り上げは徐々に増えてはいるものの、売り上げ全体の1%にも満たないのが現状だ。
しかし、地方都市では、中心市街地の活性化が課題となっている地域は珍しくなく、商業集積の維持のために百貨店の果たす役割は大きいと評価する地方自治体もあり、百貨店の衰退が中心市街地の衰退を加速させるという懸念も出ている。
研究会は、①大都市や地方など、立地や戦略に応じた今後のビジネスモデルのあり方②人手不足や働き方改革の流れを踏まえた店舗運営のあり方-などを検討課題として、リアルとネットの融合や共同物流、共同在庫管理の在り方などを今後議論するという。
百貨店の衰退は、長い間、地域に根付いたブランドに頼る〝殿様商法〟の結果でもあるかもしれない。そこは百貨店側が自ら改善すべきところだが、この研究会のようにそれをソフト面から支援することも重要だ。
菅政権は、地域の活性化を政権の重要課題と位置付けている。百貨店の閉店は中心市街地を空洞化させ、ひいては地域の活力を失わせてしまうだろう。百貨店だけに頼る必要はもちろんないが、地域の活性化の一つとして百貨店の維持に向けた検討が求められている。
(terracePRESS編集部)