日本にとって大事な〝上がり3ホール〟
臨時国会が24日スタートした。第4次安倍改造内閣の本格的なスタートであり、安倍首相にとっては自民党総裁最後の任期の取り組みが本格的に始まることになる。最後の3年間だ。
しかし、任期が決まっていることで、世間では安倍首相がレームダック化するのではないかなどとの見方が出ている。評論家の田原総一朗氏もメディアで「安倍内閣はこれから3年で終わる。ピリオドが明確な場合は、歴史的に見てレームダックになる確率が高い」などと指摘している。
メディアは、安倍首相の、正確には安倍自民党総裁の任期が決まっていることだけに焦点を当て「レームダック」などと評しているのだが、それが果たして日本にとって好ましいことなのだろうか?
メディアが「レームダック化」などと言えば、国民は「そんなものだろう」と思うし、もし「有終の美を飾る3年」と論じれば、そう信じることになる。つまり、そこには具体性や現実性があるわけではない。「レームダック」などという単なるメディアの受け止め方だけ、それもネガティブな受け止め方だけが一方的に流布されているだけだ。
これからの3年は「安倍首相にとって大事」というよりも、日本にとって極めて大事な3年間になる。
ゴルフをする人なら聞いたことがあるだろうが、「上がり3ホールが大事」とよく言われる。上がり3ホールとは、ラウンド終盤の3ホールのことだ。プロの試合などでは、16、17、18番ホールということになる。
この3ホールは、それまでのホールの疲れによってスウィングが乱れがちになったりするし、それまでのスコアが良ければ守りに入ってしまったりする。よく言われるように、強豪プロはこの3ホールで一段と集中し、攻めのゴルフを展開したりする。
安倍首相の上がり3ホールは、多くの課題が山積している。改元や東京五輪はもちろん、消費税の増税を実現する一方で、首相が「あらゆる施策を総動員して経済に影響を及ぼさないよう全力をあげる」と発言したように、景気対策にも注力することが不可欠だ。
また、米中の貿易摩擦が激しさを増している中で、日米間の貿易問題、日中間の関係強化など、それぞれ待ったなしで取り組まなければならない。さらに、国会の問題となるが、憲法改正という大きな課題も待っている。
少子高齢化の進展による生産人口の確保も大きな課題だし、消費税の増税と関連するが「全世代型社会保障改革」の実現もしなければならない。災害対策、国土の強靭化も緊急に必要だ。
もちろん、これらの取り組みはすでに始まっており、幼児教育や高等教育の無償化など子育て世代に対する支援もスタートするし、定年延長や外国人労働者の拡大など議論が始まる。災害対策もすでに補正予算で計上されている。
これらが実現するか否かは、日本社会の今後の発展を確実なものとするためには、それぞれが重要なものだ。つまり、安倍首相の上がり3ホールは、日本にとって重要な3ホールになるということだ。
「レームダック化が進む」などと論じればいいというものではない。日本人の生活を安定的なものとするためには、私たち自身が大事な3ホール、すなわち3年間と認識することが必要だ。