難癖レベルの演説批判
いつものことだが、臨時国会での安倍首相の所信表明演説に、朝日新聞などのメディアが、決して建設的とは言えない〝批判〟をしている。批判というより、難癖のレベルだろう。
朝日新聞は25日付け朝刊に「『国民と共に』は本当か」と題した社説を掲載し、首相が演説で「国民の皆様と共に」と述べことを取り上げ、「首相の本気度には疑問符が付く」と指摘している。
これは所信表明演説だから、これから国民と共にやっていくという首相の決意を述べているところだ。しかし、朝日新聞は、そうは取らない。安倍首相は国民と共に歩む気持ちは持っていないと主張する。
それを論証するために持ち出したのが自民党内の人事。社説は「自民党の憲法改正推進本部や国会の憲法審査会の幹部に側近議員を配置し、改憲案を了承する党総務会からは、首相と距離を置く石破派の議員を排除した」と強調。その上でなんと、「異論を遠ざけ、同じ考えの持ち主でことを進めようという手法は、『国民と共に』という言葉とは全くかけ離れている」と批判し、社説を結んでいるのだ。
自民党内人事や国会の委員会の人事で仮に自分に近い人物を配置したからと言って、それがなぜ国民と共にやらないことになるのか、皆目理解できない。あまりにも、論拠不十分な社説ではないのか。批判をしたいがために、こんな倒錯した論理を持ち込むしかなかったのだろう。
一方、毎日新聞は同日付けの朝刊で「首相は議論の土台作りを」と題した社説を掲載している。首相が国会での議論の土台を作れという非常に前向きに感じられる見出しだ。
入管法の改正や憲法問題などで議論しなければならないことが山積しているが、社説は「国会で与野党が熟議する土台を崩したのは首相ではないか」とし、森友・加計学園問題について「野党の質問をはぐらかす不誠実な答弁に終始した」と指摘している。
つまり、この社説は、首相に政策論争を大いにやれとハッパをかけているのかと思ったら、そうではなく、森友・加計学園にちゃんと答えろと言っているのだ。今回の国会でもまた、森友・加計学園問題が延々と取り上げられる事態になるとすれば、その異常さを異常と判断できないメディアこそ異常というほかない。
もし国会で真剣な政策論争を求めるなら、メディアは森友・加計学園問題をさらに取り上げるという野党に対してこそ、注文を付けるべきだろう。