10兆円の予備費は国民に必要不可欠
第2次補正予算案に計上された10兆円の予備費について、立憲民主や国民民主、共産などの野党各党が批判を強めている。
この予備費は、今後、第2波、第3波などの可能性もある新型コロナウイルス感染症の対策のためのもので、それを批判するというのだから、もはや野党の姿勢は理解不能だ。
予備費は使途をあらかじめ定めず、政府の判断で柔軟に使えるものだ。柔軟に使えるとは言っても今回の予備費は「新型コロナウイルス感染症対策予備費」としており、菅官房長官も「新型コロナウイルス感染状況に応じ、臨機応変に対応する必要がある」と述べている通り、通常の予備費とは異なり、あくまでも新型コロナ対策として、つまり使途を限定した予備費ということになる。
こうしたケースはこれまでもあり、例えば2008年12 月に麻生内閣が策定した「生活防衛のための緊急対策」に「経済緊急対応予備費」の新設が盛り込まれた。これを受けた09年度予算には、通常の予備費3,500億円と別枠で、使途を限定した経済緊急対応予備費1兆円が計上されている。
憲法は第86条で「予算の事前議決の原則」を定めているが、同時に87条第1項で「予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる」と規定しており、憲法上も事前原則の例外として認めているものだ。
一方で87条第2項では「すべて予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない」と定めており、事後の国会承諾を経ることで、予備費の支出に対し国会の統制が及ぶようにしている。
しかし、事後に国会の承諾が得られなかったとしても、すでに予備費は支出されているため、何ら法律上の効果を及ぼすものではないと解釈される。
このため、野党は「財政民主主義に反する」などと主張しているのだろうが、予備費が緊急的な事態に対応するための制度であることはまったく理解していないのだ。
共産党の志位委員長は記者会見で「財政支出の3分の1が予備費というのは国会軽視というより国会無視だ。予算の体をなしていない」などとも批判している。
確かに、総額31兆9,114億円の第2次補正予算案からみれば新型コロナ予備費は3分の1を占めることになるが、補正予算は本予算を修正するというものであり、2次補正により本年度予算は約160兆円、そのうち10兆円が新型コロナ予備費となるわけだ。決して政府予算の多くの部分が予備費になるわけでもない。
新型コロナウイルス感染症の今後が確定的に見通せない中で、野党は予備費に反対する野党は、どんな緊急事態が発生しても一定程度の時間が必要となる補正予算で対応することを求めているわけだ。新型コロナ対策をないがしろにして予備費批判を続ける野党は、それでも責任ある政党と言えるのだろうか。
(terracePRESS編集部)