新型コロナで地方創生が新たなステージに
新型コロナウイルス感染症という危機をチャンスに変えることができるとすれば、働き方の見直しはもちろん、日本の国土のあり方、地方のあり方を変える契機になるということだろう。東京一極集中の是正と同時に地方の活性化に取り組む発射台になる。政府はこれまで地方創生を重要な政策の柱としてきたが、その地方創生を新たなステージに移行させなければならない。
政府は先ごろ、2020年「まち・ひと・しごと創生基本方針」をまとめた。そもそも政府の第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、将来にわたって「活力ある地域社会」の実現と「東京圏への一極集中」の是正を共に目指すことにしており、2020年度を初年度とする今後5か年に施策を展開することにしていた。
東京一極集中の是正は長年の懸案だが、実際にはなかなか困難だったことはいうまでもない。企業の立地は東京に集中する一方、生産拠点は中国などの海外へ展開してきた。これにより地方は経済、社会が衰退した。
しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大で、企業はテレワークの導入を進めた一方、各国で実施されたロックダウンで各国での事業活動や日本企業の外注先の工場が生産を停止したり、命令外の日本企業の工場まで生産が停止したりした結果、サプライチェーンが分断された。
サプライチェーンの分断は、調達先の多様化などの対応策ももちろんあるが、一部の企業や業種は生産拠点の国内回帰もあるかもしれない。
いずれにしても、新型コロナ後の経済社会の構築では、東京一極集中の是正は不可欠となる。そういう意味では今までやりたくともできなかった東京一極集中の是正を、新型コロナを契機にしてやり遂げなければならない。それこそが社会を変えるということだろう。
基本方針では、デジタルによる変革、今でいうデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や若者の地元定着を促すため地方国立大の定員を増やすなどの大学改革、テレワークの広がりを機に、東京企業のサテライトオフィスを地方に開設したり、地方勤務を支援したりすることを柱としている。
しかし、残念ながら基本方針からは、東京一極集中をなんとしてでも是正しようという力強さはあまり感じられない。安倍首相は確かに15日の「まち・ひと・しごと創生会議」で「集中から分散へ。日本列島の姿、国土の在り方を、今回の感染症は、根本から変えていく。その大きなきっかけにしなければならないと、こう考えている。ポストコロナの時代もしっかりと見据えながら、地方創生を新たなステージへと押し上げる」と述べているが、それを実際に行うことが、地方圏だけでなく、日本全体を活性化することになる。
(terracePRESS編集部)