石破氏の「真の地方創生」って何?
自民党の総裁選に出馬した石破茂元幹事長は、「真の地方創生」と称し、地方の活性化を訴えている。8月24日には、地方創生に特化した公約発表会見を開き、現在の地方創生政策について「否定するつもりはないが、少し勢いを失ったかなという実感を地方が持っているのが現実」と述べ、地方創生に注力する考えを示した。
実際、石破ビジョンの中で「個性と自立性を発揮し、地方で成長と豊かさを実感できる真の地方創生の実現」と銘打ち、「全国民ひいては全世界が利益を享受するもうかる農林水産業の実現」「大都市の豊かさが地方に波及するという発想を転換、魅力ある産業が存立する豊かな地方経済」などの政策を掲げている。
石破氏が会見で現在の地方創生について「否定するつもりはないが」と述べたのは、自らが安倍内閣で初代の地方創生担当相を務めたからだろう。そこは理解できる。
しかし、石破氏は会見で「都市から地方に(経済の)果実を波及させるのではなく、果実は地方で生み出す。そこはかなり考えが違うと思う」と述べているが、これは意味不明だ。この点は前述したようにビジョンにも「大都市の豊かさが地方に波及するという発想を転換、魅力ある産業が存立する豊かな地方経済」と記載されているのだが、「魅力ある産業が存立する豊かな地方経済」などと聞こえはとてもいいのだが、そこへ向かってどのような政策をとるのかは全く不明だ。
そういう意味では、「全国民ひいては全世界が利益を享受するもうかる農林水産業の実現」も魅力ある言葉だが、何を言いたいのか分からない。質のいい農林水産物を適切な価格で国内にも海外にも供給するということだろうが、これは今目指している農政とどこが異なるのだろう。
ビジョンは言葉遊びではない。具体的な政策を示さなければ、それはビジョンではない。
石破氏は現在の地方経済に懐疑的のようだが、アベノミクスの結果、地方経済が勢いを持ったことは事実だ。
何をもって地方経済の状況を判断するかは難しいが、有効求人倍率はその指標の一つだ。有効求人倍率は、有効求職者数に対する有効求人数の割合で、雇用動向を示す重要指標。倍率が1を上回れば人を探している企業が多く、下回れば仕事を探している人が多いことを示す。
この有効求人倍率は都道府県別にも公表されているが、細かくなってしまうので、地域別にみてみよう。2015年7月と2018年7月を比較した。
北海道は0.97→1.15、東北は1.23→1.52、南関東1.27→1.66、北関東1.16→1.60、北陸1.36→1.89、東海1.41→1.90、近畿1.10→1.60、中国1.39→1.92、四国1.19→1.58、九州1.02→1.49などとなっている。
これをみれば地方の雇用環境が改善しているのは一目瞭然だ。言うまでもないが、雇用環境が改善したのは地域経済が順調に推移しているからだ。
石破氏のように「大都市の豊かさが地方に波及するという発想を転換」などと耳障りのいいことをいうのは容易だが、実際必要なのは、住んでいる人々の生活をどう向上させるかだろう。
アベノミクスによって、地域経済が活性化し、雇用が拡大し、所得環境が向上していることは間違いない事実だ。