戦後75年後の安全保障
日本は先ごろ、終戦から75年を迎えた。75年と言えば人ひとりの人生にも匹敵する長さだが、この間日本の平和は保たれてきた。それは日本が平和を重んじる国であることはもちろんだが、幸いにも日本を取り巻く国際環境が〝平和〟をもたらしてくれたからだ。しかし75年の平和は、次の75年の平和を保証するものではない。
民放テレビは何かあるとお定まりのように街頭インタビューをするが、終戦記念日でも一般の人々に「日本が戦争をする国ではなくてよかった」などの感想を言わせていた。日本が戦争を始める、つまり他の国を侵略しないということは戦後日本のコンセンサスで、日本人の誰もがそれを認めているといっても過言ではない。
しかし、メディアは自国であっても日本が他の国を侵略する可能性がある国と思っているのだろう。「悪いのはつねに日本」という自虐的な史観だ。
河野防衛相が記者会見で、ミサイル防衛について「中国や韓国の理解を得られる状況ではないのでは?」と質問した記者に、「主に中国がミサイルを増強しているときに、なぜその了解がいるのか」とバッサリ言い切った一幕があったが、こうしたメディア記者は、日本が他国を侵略することはあっても、日本の領土、領海、領空が侵され、日本国民の生命、財産が奪われるという事態を想定したことがないのだろう。
日本が他国から侵略されるか否かということは、その当該国の意思と能力によって決まってくる。日本ができることと言えば、侵略されないための抑止力を持つことだ。自衛隊はもちろん、日本にとって日米安保条約もその抑止力の重要な能力だ。
戦後日本の安全保障の考え方は「専守防衛」で、相手から武力攻撃を受けたときにはじめて防衛力を行使するという受動的な防衛戦略だが、「平和」「平和」と唱えてさえいれば平和が実現できると思っているのがメディアの実態なのだろう。
しかし、一方で現実の日本を取り巻く環境は年々、厳しさを増している。中国はすでに世界の軍事大国となり、さらにその軍事力を強化し、南シナ海には軍事拠点を設け、軍事活動も活発化させている。台湾をめぐっては安定的な安全保障制度が構築されているとは言い難いのが現実だ。
朝鮮半島では韓国と北朝鮮の対峙が続いているが、それだけでなく北朝鮮は核・ミサイルを保有し、日本の安全を脅かしている。また、北方領土、竹島、尖閣諸島などの領土問題も未解決のまま存在している。
さらに言えば「近年では、領土や主権、経済権益などをめぐる、純然たる平時でも有事でもない、いわゆるグレーゾーンの事態が国家間の競争の一環として長期にわたり継続する傾向にあり、今後、さらに増加・拡大していく可能性がある。こうしたグレーゾーンの事態は、明確な兆候のないまま、より重大な事態へと急速に発展していくリスクをはらんでいる」(防衛白書2020年版)という。
いずれにしても、緊張が増すこれからのアジアで、日本の平和を維持するために必要なことは、現実を見据えた安全保障であり、抑止力の強化だ。それが日本人の生命、財産を守ることになる。
(terracePRESS編集部)