外交関係の難局乗り切るのは
民放テレビなどメディアは新型コロナウイルス感染症や異常な猛暑などを連日報じているが、その裏で日本を取り巻く国際環境の緊張が日増しに高まっている。香港情勢、米中関係、日韓関係など日本を取り巻く外交課題は待ったなしと言える。外交のかじ取りを間違えれば国益が大きく損なわれることになりかねないだけに、安倍政権の外交に期待が高まりそうだ。
最近の国際関係の最大の話題は米中関係だろう。トランプ米政権がテキサス州ヒューストンの中国総領事館に対し経済スパイ活動に関わったとして閉鎖を命ずると、それへの報復として、中国政府が四川省成都市にあるアメリカ総領事館の閉鎖を命ずるなどエスカレートした。これはほんの米中関係悪化を示す一例に過ぎず、両国関係は過去数十年間で最悪レベルに達しているとさえ言われている。
その米国の対中観の根底にあるのが、中国の脅威が世界に及んでいるとの思考だ。そんな米国の対中観をよく表しているとして注目を集めたのが7月23日に行われたポンぺオ国務長官の演説だ。
ここで国務長官は「中国との闇雲な関与の古い方法論は失敗した。我々はそうした政策を継続してはならない」「中国の挑戦に向き合うには、欧州、アフリカ、南米、とくにインド太平洋地域の民主主義国家の尽力が必要になる」「いま行動しなければ、中国共産党はいずれ我々の自由を侵食し、自由な社会が築いてきた規則に基づく秩序を転覆させる」などと、厳しい口調で中国封じ込めの必要性を訴えた。
もちろんそれは「トランプ政権の対中観だ」との見方もあるが、ペンス副大統領が2018年10月4日の演説で「米国は経済の自由化が中国を我々と世界とのより大きなパートナーシップに導くことを期待していた。しかし、中国は経済的な攻撃を選択し、その結果、拡大する軍事力を勢いづかせた」との歴史観が米国内で普遍的なものであるとしたら、厳しい米中関係が継続することは今後も避けられないだろう。
こうした米中関係の変化に日本は無縁でいられない。アジア情勢に劇的な変化を与え、南シナ海での米中間の緊張は高まるだろうし、尖閣諸島をめぐっても大きな影響を与える。
ところで、日本外交という視点で見れば、米中関係の影響を受ける日中関係に続いて日韓関係も厳しい関係が続くだろう。旧朝鮮半島出身労働者、いわゆる元徴用工の訴訟をめぐる差し押さえ資産の現金化手続きが進めば、両国関係はさらに悪化することが避けられない。もし両国関係の悪化を懸念して妥協することがあれば、日本の国益を損ねることになる。
いずれにしても日本は米国との関係を基盤としながら日本の国益を最大限守る外交を展開しなければならない。国際関係の難局にあたって外交力を発揮できるのは安倍政権だろう。
(terracePRESS編集部)