未来の政府の役割は?
経済産業省が、社会のニーズや価値観の多様化、デジタル技術の変化を踏まえて、今後の公共サービスの供給や、それに伴う政府の役割についてまとめた報告書「21世紀の『公共』の設計図」が示唆に富んでいておもしろい。
「公共サービス」というとこれまで、人々に効率良く届けられるよう、専ら政府が提供するものだったが、その一方で、ニーズや社会課題が多様化など政府だけが担う公共サービスは、住民の求めに細やかに応えることは容易ではなくなっているのも事実だ。
報告書は15ページのコンパクトなものだが、「公共」を誰がどのように担うか、政府の役割はどう変革されるのかについて整理している。
報告書はこれからの変革する社会においても「変わらないこと」として「相互扶助、私的な経済活動(市場におけるビジネス)、政府による公共サービスであれ、大事なことは、住んでいる場所、年齢や性別、バックグラウンドなどに関わらず、あらゆる人が十分な機会と生きるために必要なサービスにアクセスできるようにすること。これを担保する主体としての役割は、政府の根幹としてこれからも求められる」として、「機会とアクセスの担保」は今後も変わらないものと位置付けている。
その上で、〝今後変わること〟として「ハード・ソフトインフラから、デジタル公共財の提供へ」「サービス提供者から、ファシリテーターへ」「適切な執行から、コミュニティマネジャーへ」と3つを挙げ、その結果として「政府と個人は協働するパートナー」になっていくとしている。
報告書によれば、こうした思想に基づいた活動はすでに生まれているとして(1)インド政府が主導する手続きのデジタル化プロジェクト「India Stack」(2)身の回りの課題を、当事者が解決することを目指す「一般社団法人 Code for Kanazawa」(3)ニーズを可視化する試みの「一般社団法人ボランティアプラットフォーム」(4)千葉県白井市の「お元気みまもり事業」(5)島根県海士町の「隠岐島前高校魅力化プロジェクト」-の5つを紹介している。
例えば、お元気見守り事業は、ベッドタウンで団塊世代の住民が多く、10年後には後期高齢者の倍増が見込まれる地域で「住民の発案に端を発し、高齢者への定期的な訪問・見守りについて、住民ボランティアの希望と、高齢者の訪問希望を募り、市がマッチングするという事業を開始した」ものという。
安倍政権は現在、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)」を目指す「Society 5.0」に取り組んでいる。IoTやAIなどの最新テクノロジーを活用した便利な社会だ。こうした社会の中で、政府の形態がどう変わっていくのか、変えるべきなのか、国民一人一人が考える必要がありそうだ。
(terracePRESS編集部)