岸田首相「ロシアの平和条約交渉中断宣言にひるまない」
日米など主要7カ国(G7)は先ごろ開いた緊急首脳会議で、全ての国々にロシアの「制裁逃れ」や侵攻を助けないよう協調を求め、首脳声明を採択した。ロシアは日本に対して牽制を強めているが、岸田首相は「ひるまない」と明言し、ロシアへの外交的、経済的圧力を一層強めることを強調した。
首脳会議では冒頭、ウクライナのゼレンスキー大統領がオンラインで出席、一層の支援を要請した。
岸田首相は、G7首脳が国際秩序の根幹をめぐる歴史の岐路に立っており、連携して対応する必要性があるとの考えを改めて示したうえで、「日本は、ロシアによる平和条約交渉中断宣言にひるむことなく、今後とも断固とした対応をとっていく」ことなどを説明した。
北方領土問題を含む日本との平和条約締結交渉については、ロシア外務省が「公然と非友好的な立場を取り、わが国の利益を損なおうとする国と2国間関係の基本文書の調印を協議することは不可能だ」などとし、北方四島への日本人のビザなし渡航の停止や北方四島での共同経済活動に関する協議からの離脱も含めて、交渉を中断することを表明した。
これは日本の対ロ制裁への対抗措置で、日本に責任があるわけではない。日本に対して一方的に責任を押しつけるものであり、日本の制裁に圧力をかけるものだ。そうしたロシアの姿勢を容認する日本人はほとんどいないだろう。
だからこそ、岸田首相が首脳会議で「交渉中断宣言にひるむことなく、今後とも断固とした対応をとっていく」と表明したことは、重要なメッセージの発信になる。メディアもこうしたメッセージを発信したことを、もっと強調すべきだ。
首脳会議では、岸田首相はさらに、ロシアによる大量破壊兵器が使用される恐れがあることなどについて「核兵器による威嚇、ましてやその使用は許されない」などと、戦争被爆国、被爆地広島出身の首相として強調。生物・化学兵器の使用についても重大な懸念を表明。
ロシアへの制裁をめぐっては、「最恵国待遇」の撤回に向けた法令整備を速やかに進めることや、輸出禁止対象に81の軍事関連団体の追加、贅沢品の輸出禁止措置の速やかな導入、デジタル資産を用いたロシアの制裁回避に対応するための法令整備などを示した。
首脳会議が採択した首脳声明では「我々は全ての国に対し、ロシアによるウクライナにおける侵略継続の助けとなるような軍事又はその他の支援をロシアに対して行わないよう求める。我々はそのようないかなる支援についても警戒していく」との文言を盛り込んでいる。
これは、対露制裁に加わらないだけでなく、軍事支援に乗り出す懸念も指摘されている中国を念頭においたもので、今後、中国の行動によっては西側各国との緊張が高まる可能性もある。
いずれにしても、ロシアがウクライナ侵略を停止し、撤退するまでG7をはじめとする各国の協調や連携が重要となる。岸田首相が発したように、日本がロシアの行動を決して容認しないというメッセージの発信は、制裁とともに極めて重要だ。
(terracePRESS編集部)