誤解が誤解を呼ぶ新型コロナ対策〝論争〟
新型コロナウイルス感染症をめぐっては、さまざまな誤解が生まれ、それがまた新たな誤解を生むなど、正しい情報やあり方が正確に伝わっていない。
少し前になるが、新型コロナウイルス感染症対策をめぐり、山梨県の長崎知事がクラスターを発生させたキャバクラを非難したことに、橋下徹元大阪市長がツイッターで長崎発言を批判するという一幕もあった。これも誤解が生んだ〝論争〟といえる。
長崎知事の発言は7日の臨時記者会見でのもので、クラスターを発生させた店について「極めて強い懸念と憤りを感じる。県民全体の生命を脅かしかねない迷惑行為」と述べ、厳しく非難した。
この発言に対し、橋下氏がツイッターで「(長崎)知事は営業した店を責めるのではなく、(補償金を支給する)法律を作らない政府与党と国会を責めよ!」などと批判した。
橋下氏はキャバクラが自粛要請に応じず、営業を継続したのは補償がないためという認識があるのだろう。都道府県知事が休業要請などをすることを認めている特措法第24条9項を問題視し、休業要請の実効性を確保するためには、休業補償金を支給する仕組みが不可欠というわけだ。だからこそ長崎知事に対し「店を責めるのではなく、そうした仕組みを作らない政府や国会を責めよ」と言ったわけだろう。
休業補償の在り方は議論する必要があるかもしれないが、長崎知事は単に休業しなかった店を責めたわけではない。
長崎知事は記者会見で「当該店舗は、社会全体が感染拡大防止に対して尽力をしている最中に、感染防止対策を行っていなかった。その結果、従業員あるいはお客様の命を危険にさらしただけではなく、そのしかるべき顛末として、県内におけるクラスターの発生をもたらした。感染拡大防止をきちんと行わず、また、県の基準に基づくガイドラインを作成しないままに、3密状態での営業を展開することは、結果として県民全体の命を脅かしかねない極めて危険な迷惑行為と考える」と語っている。
山梨県の場合、接待などを伴う飲食店への休業協力金は支給していないが、感染防止指針を順守している店については休業要請を個別解除しているが、クラスターが発生したキャバクラは県に対策を提出せず営業を続けていたわけだ。
現在、感染防止対策を行うのは社会的責任だ。この店は社会的責任を果たしていなかったがために、クラスターを発生させたのであり、長崎知事が「強い憤りを感じる」と非難したのも当然だろう。何が何でも休業を求めるというのではなく「感染防止対策をして営業してください」と言っているわけで、感染防止と経済の両立を求めているのだ。
だから橋下氏の「店を責めるのではなく休業補償を」という主張とは論点が異なることになる。
橋下氏は長崎発言を誤解したのかもしれない。こうした誤解は致し方ない部分もあるが、それをメディアが報じることで、どんな店にも休業補償をすべきなどといった新たな誤解を生むことにもなりかねない。
(terracePRESS編集部)