示唆に富む元沖縄県知事2氏のインタビュー
読売新聞が8月19日朝刊4面「政治の現場 検証沖縄」で稲嶺恵一、仲井真弘多の元沖縄県知事2氏のインタビューを掲載している。両氏ともインタビューで語られた言葉は極めて示唆に富んでいるし、啓発される。
稲嶺氏は知事を1998年から2期8年務め、2000年には沖縄サミットの誘致にも成功した。
「課題 基地だけでない」との見出しの記事では、米軍普天間飛行場の移設問題について振り返っている。「政府との交渉で私が心がけたことは『オール・オア・ナッシング』ではなく、常に『ベターな選択』を模索することだった。政治には表と裏があり、裏舞台で根回しをする人がいないと落としどころを探れない」と述べている。残念ながら翁長雄志知事の周辺にはそうした人材がおらず、その結果、硬直的になり〝ベターな選択〟などできなかったというわけだ。
翁長氏のように共産党が大きな力を持つ「オール沖縄」が支持している限り、そこには裏舞台で根回しなどする人材など望むべくもなく、つねに評論家的な理想論だけを掲げることになる。しかしこれは、政治家でも行政トップのあるべき姿ではない。
稲嶺氏は名護市辺野古への移設については「今、賛成か反対かの問題になっている。大切なのは、日本全体の防衛体制はどうあるべきか、という議論だ。その中で、沖縄の基地負担が好ましいかどうかを考えなければならない」と指摘。
沖縄県知事については「沖縄県知事は全国一、難しい知事だと思う。基地問題や米軍統治などの重荷を背負い続けなければならない。他方で、政府と上手に折衝し、予算を獲得する能力も要求される。沖縄が抱える課題には経済や離島振興もあり、基地問題だけで知事が決まっては困る」と語っている。
仲井真氏は2006年から2期8年務め、米軍普天間飛行場の移転先となる名護市辺野古沿岸部の埋め立てを承認した。
仲井真氏は翁長県政について「沖縄の課題をきめ細やかに把握して対応していく点が不十分だった。政府に対し、あってほしい基地の姿を言えば、その方向に進むかもしれない-という幻想を振りまいたのは現実的ではなかった」と述べている。
名護市辺野古への移転については「普天間飛行場の移設先が県外であればありがたい、という気持ちは誰しも持っており、私も同じだ。知事の時に県外移設の可能性も検討した。ただ、何年かかるか分からない。普天間の危険性除去を急ぐ点からも、名護市辺野古への早期移設が一番現実的な解決策だ」と強調。
次期知事への要望では「沖縄は観光業が起爆剤となって何とかやっているが、他の産業はまだきつい。もう一頑張りしないといけない。次の知事は県民生活に繊細な政策感覚を持ち、基地問題では空理空論ではなく、現実的に徐々に解決できる人が望ましい」と話している。
経験に基づいた2氏の言葉は重い。「ベターな選択」と「名護市辺野古への早期移設」「課題には経済や離島振興もある」と「県民生活に繊細な政策感覚」とは、それぞれ表現は異なるが同じことを語っている。それらを実現できる知事が生まれるか否かは、沖縄県民の選択にかかっている。