問われる普天間の危険性除去
沖縄県の翁長雄志知事の死去に伴う県知事選が9月30日に決まった。それを受けて、地元新聞の沖縄タイムスが14日付け朝刊に「[知事選9月30日]辺野古の環境保全問え」と題した珍妙な社説を掲載した。
社説は、11日に開催された新基地建設断念を求める県民大会の参加者が確認したのは「知事の遺志を受け継ぐ」ことで、その翁長氏の遺志とは「保革を超えた枠組みを維持し県民の幅広い結集によって新基地を造らせないことである」という。
その上で社説は「知事急逝を受けて県は国に対し土砂投入の凍結とジュゴンやサンゴなどの環境調査実施を申し入れてはどうか」と提案している。知事が急逝したのだから、土砂投入の凍結と、環境調査を実施するよう国へ申し入れるよう主張しているのだが、なぜ知事が急逝すると環境調査などを申し入れないとならないのか、皆目不明ではないか。
それは措くとして、実はこの社説は、一読すると「土砂投入の凍結と環境調査の実施の申し入れ」しか主張していないようにも読めるが、沖縄タイムスの本音はもちろん、環境調査の申し入れなどではなく、知事選の争点を辺野古問題にしたいということだ。
その点について、社説は最後に「安倍政権が進める新基地建設の是非が知事選の争点であることは言うまでもないが、もう一つの争点として9条改憲が浮上する可能性が出てきた」と指摘している。「新基地建設の是非が知事選の争点」とさらっと書き、驚いたことに9条改憲も争点になるというのだ。
改めて指摘するまでもないが、知事選は、沖縄県という自治体の行政のトップを決める選挙だ。辺野古問題はまだしも、9条改憲が争点になるとは一体どういう思考なのか。改憲問題が問われるべきは国政選挙であり、知事選では地域経済の活性化や経済格差の縮小、海外からの観光客誘致、社会資本整備、雇用問題など幅広い地域の課題が問われなければならない。
もし、9条改憲などを争点にしようというのなら、あまりにも県民生活を無視した社説というしかない。地元紙として視野狭窄すぎるだろう。
辺野古の飛行場建設をめぐる環境問題は確かに県政の課題なのかもしれないが、それにもまして、否、それよりも何百、何千倍も普天間基地の危険性除去が重要な課題だ。県民の安全、安心できる生活を確保するということは、地元行政のトップの重要な責務だ。
行政のトップが求められるのは、評論家的な立場ではなく、現実的な課題に対して、どのように現実的に前進させ、解決するかということだ。
確かに、沖縄タイムスのようなメディアが評論家的な立場で「辺野古の環境保全問え」と主張するのならば、百歩譲ってそれでも構わないが、本来であれば、それよりも何百倍もの紙面を使って「普天間の危険性除去を図れ」「普天間の危険性除去を問え」と声を大にするのが地元メディアの役割のはずだ。