消費増税でも改善した消費者心理
内閣府が先ごろ発表した10月の消費動向調査によると、消費者心理の明るさを示す消費者態度指数(2人以上の世帯、季節調整値)は前月比0.6ポイント上昇の36.2となった。雇用や可処分所得の増大など堅調な景気が続いている中で、消費者心理はこれまで低下する傾向を示していたが、23カ月ぶりに前月を上回る結果となった。
ただ、全体的な低下傾向が転換したのかどうかは判断できないため、10月の消費者マインドの基調判断は「弱まっている」に据え置いている。
消費動向調査は、今後の暮らし向きの見通しなどについての消費者の意識や物価の見通しなどを把握することで、景気動向判断の基礎資料を得るために行われている。
今回の指数で特に注目すべきは、消費税増税後に実施された調査だということだ。9月までは、消費税増税を控えて悪化が続いていたが、今回の調査は増税後に実施しており、消費者の増税に対する不安感が和らぎ、暮らしぶりが改善するとの見通しが広がったのが要因だ。
消費者態度指数を構成する4指標をみると、「暮らし向き」が0.6ポイント改善し34.5、「収入の増え方」が0.1ポイント改善して38.8、「耐久消費財の買い時判断」が2.9ポイント改善して31.0となった一方、雇用環境は0.9ポイント低下し40.6となり、4指標のうち3指標が改善した。
1年後の物価に関する見通しについては「上昇する(2%以上~5%未満)」が36.0%と)と最も多く、前月差でみると、「上昇する」の回答の割合が5.0ポイント減少したが、「変わらない」が3.6ポイント、「低下する」が1.0ポイントそれぞれ増加する結果となった。
今回の調査は、台風19号の影響で、長野県内の一部地区(25世帯)で調査を見合わせているが、消費者に暮らし向きが改善するという意識があることは事実だろう。こうした傾向を力強いものにするには、来春の賃上げも重要な要素となるが、すでに西村経済財政担当相は10月23日、経団連の中西会長らと意見交換し、「デフレ脱却に向けて賃上げ継続は必要」などとして2020年春闘での賃上げ継続を要請している。
政府は2014年春闘以降、産業界に賃上げを求め続けているが、来春闘でも同様に政府が賃上げを要請したわけだ。
政府による賃上げ要請は、一部では「官製春闘」とも呼ばれているが、それはまさに国民の暮らし向きを良くしたいという安倍政権の意識の表れだ。
(terracePRESS編集部)