総力戦で挑む防災・減災
国土交通省が、先ごろ開かれた経済財政諮問会議に提出した資料の中に「国民の命と社会経済活動を守り抜くため、総力戦で挑む防災・減災」との一文があった。まさに今年は、今後の自然災害の頻発や激甚化が懸念される年となった。この状況をみれば、防災・減災に〝総力戦で挑む〟ことは、国民の誰しもが期待するところだろう。
国交省の資料では「第一に、国民の命と暮らしを守るため、激甚災害が頻発する昨今の状況に鑑み、国家百年の大計として、防災・減災が主流となる安全・安心な社会を実現」としている。
もちろん、日本経済の次なる成長につなげるため、民間投資を促すストック効果の高い社会資本を重点的、戦略的に整備することで、日本の産業競争力や国民生活の利便性の向上を図ったり、豊かで暮らしやすい社会の実現を目指して、新しい技術などを活用したスマートシティの取り組みを推進したりするなど、社会資本整備と言う視点に立てば、防災・減災以外にも課題はある。
しかし、自然災害が頻発したり激甚化したりしている現実をみれば、国民の生命、財産を守ることが急務だ。
1時間当たり50ミリ以上の降水を1990年前後と2014~18年と比べると約1.3倍。土砂災害は約2.2倍になっている。この比較では今年の分が含まれていないが、今年は台風第19号だけでも、広い範囲で観測史上1位の記録を更新する大雨が降り、その結果、71河川140箇所で堤防が決壊。浸水被害は67,217件にも及んでいる。土砂災害は20都県に渡る広範囲で発生し、821件となっているのだ。
国交省は、これらの災害が多発する現状を捉え「今後想定される自然の脅威に対応した新たな対策への転換を図り、国・県・市等が連携し、ハード・ソフトの両面から防災・減災、国土強靱化の取組を強力に推進」としている。
国も自治体も、そして民間も連携して防災・減災に備える。加えて、対策にはハードとソフトを一体化させる必要もある。まさに〝総力戦〟だ。
さて、国会に目を転じると、相も変わらず野党は、重箱の隅をつつくような政権批判を繰り返している。国民の生命財産を守る災害対策は国政の重要課題であるはずで、本来は、そこに野党の視点が必要なのではないか。それすらしないで点数稼ぎの政権批判だけでは、国民の支持は得られない。
「防災、減災は総力戦」といっても、どうやら野党は、国や政権与党、自治体、民間に任せきりで、総力の一つになろうとはしていないようだ。
(terracePRESS編集部)