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サンゴ移植許可撤回は新たな〝時間稼ぎ〟か

米軍普天間飛行場の移設先、沖縄県名護市辺野古での代替施設新設工事に伴う埋め立て予定海域でのサンゴ移植をめぐり、沖縄県と国が対立している。サンゴ移植について国を相手取った訴訟で敗訴した沖縄県が、実際に始まった移植作業に〝難癖〟をつけているようなもので、普天間飛行場周辺住民の安全確保という最優先課題は忘れ去られている。

 

サンゴ移植をめぐり、農相が移植を許可するよう指示したのは違法だとして、沖縄県が取り消しを求めた訴訟で最高裁が7月6日、県の上告を棄却、県の敗訴とした福岡高裁那覇支部判決が確定した。

県や一部メディアは判決で裁判官5人中2人が反対したことを強調しているが、2人の裁判官は、軟弱地盤に伴う工事の変更申請がなされていなかった状況で県が許可しなかったのは裁量権の逸脱などにあたらないとしただけで、変更申請が承認されれば許可するのは当然としており、サンゴ移植という行為に違法性があるとしたわけではない。

 

この判決を受けて沖縄県は28日、沖縄防衛局が申請したサンゴ類約4万群体の移植を許可した。サンゴの生残確率を高めるため、高水温期や繁殖期、台風の時期などを避けることを条件に付したという。

 

この問題は、ここから急速に動きが激しくなる。沖縄防衛局は翌29日から、埋め立て予定区域内の大浦湾側のサンゴの移植を始めたが、30日になると沖縄県が沖縄防衛局に出していた移植許可を撤回し、その後2日になると県の許可撤回を巡り、防衛省が取り消しを求めて農水相に審査請求した。

 

沖縄県の許可撤回理由を「(沖縄防衛局が)高水温や台風の時期は避けるとした事前の条件に反した」などとし、その基準として海水の温度は30度などと考えられているという。

これに対して国は「専門家の意見を踏まえて、水温などの現地の状況に配慮して実施した」(岸防衛相)と述べており、作業の適法性と、県の撤回の違法性を指摘している。

 

今回の移植作業では海温は30度に達していなかったとされるが、そもそも、海水の高温期に移植作業がふさわしくないのなら、この期間の許可をすべきではないし、それに加え、県側は今回の許可撤回にあたり、沖縄防衛局からの聴聞の機会さえ与えていない。

沖縄防衛局が海温などについてどのような判断を下して移植作業を開始したのかすら把握しないまま、一方的な許可撤回をしたわけだ。

県側は「緊急性があった」ことを理由にしているというが、このような手続きは認められるべきものではない。

 

水産資源の保護培養という観点からサンゴの保護は確かに必要だ。しかし、普天間飛行場の周辺には多くの住民が現実に住んでおり、それら住民の安全や安心できる生活の確保はそれ以上に重要だ。

 

普天間飛行場では部隊の国外、県外移転が進んだが、現時点ではこれ以上の対応策は辺野古の代替施設の建設しかない。今回の県の手続きをみれば、最高裁で敗訴が確定した県が、〝時間稼ぎ〟をしているとしか思えない。沖縄県は、普天間飛行場周辺の住民の安全確保を最優先に考えなければならない。

 

(terracePRESS編集部)

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