北欧2カ国のNATO加盟申請は歴史的分水嶺
ロシアによるウクライナ侵略という現代の歴史的な異常な事態を受け、北欧で〝軍事的中立政策〟を続けてきたスウェーデン、フィンランドの2カ国が北大西洋条約機構(NATO)への加盟を申請した。両国の加盟申請は「欧州の歴史的な分水嶺」(サリバン米大統領補佐官)だが、日本も歴史の流れが変わったことを改めて認識する必要がある。
北欧2カ国は伝統的に軍事中立路線を続けてきた。それはロシアという軍事大国からの脅威から国を守るという政治的な判断だった。
フィンランドは東西冷戦期にNATOにもソ連が作ったワルシャワ条約機構にも属さなかったし、ソ連崩壊後も対ロ関係の緊張を避けるために軍事的な中立を貫いてきた。
スウェーデンはナポレオン戦争が終わった1815年以降、一貫して軍事的中立を維持してきた。
しかし、そのロシアの軍事的な脅威が顕在化した今、その伝統的な〝軍事的中立政策〟を変更してでも国を守るという固い決意を示したことになる。まさに「歴史的な分水嶺」だ。
だが、こうした状況は日本も決して無縁ではない。ロシアは4月、北方領土の択捉島と国後島で軍事演習を実施しているし、5月に入ってからは、中国海軍の空母「遼寧」を中心とする空母打撃群が、沖縄南方の海域から台湾西方の海域で活動を続けている。
中国は、南シナ海、南沙諸島で軍事拠点の設置を進めているし、尖閣諸島の領海侵犯も繰り返している。
ウクライナ侵略という現代社会では異常な蛮行を犯したロシアが国際的に批判されるなかで、北方領土や日本周辺海域での訓練を行うということは、日本をけん制するという意図があるにほかならない。中国やロシアが今後、インド洋や太平洋の平和を揺るがすような行動を起こす可能性を否定できない状況となっているのだ。
岸田首相は11日、訪日したフィンランドのマリン首相と日・フィンランド首脳会談を行っている。
この会談では、東シナ海、南シナ海における力を背景とする一方的な現状変更の試みや、急速で不透明な形での軍事力の強化、地域での軍事活動の活発化への懸念を共有するなど、名指しこそしていないが、中国の行動への警戒感を示し「一方的な現状変更の試みや経済的威圧に対し一致して毅然として対応していく」ことを確認している。
その上で岸田首相は、フィンランドが伝統的な対露外交を見直し、NATO加盟に向けた議論も進めていることに理解を示し、「日本も対露政策を大きく転換すると共に、自国の防衛力及び日米同盟の強化に努めている」などの旨を述べている。
対ロ政策の転換自体が歴史的な転換だが、防衛力の強化、日米同盟の強化も歴史的な転換だ。各国が軍事費を増やす中で、日本も防衛努力を一層強化しなければならない。それが日本の安全保障につながる。
欧州の緊張は決して日本とも無縁ではなく、日本人自身も歴史が大きく転換しているという認識を持つべきだろう。
(terracePRESS編集部)