ロシア抗議の意思表明の継続が重要
ロシアは依然としてウクライナ侵略を継続しており、ウクライナ国民の生命、財産が危機に瀕している。先ごろ開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合では、ロシア側の発言の際に萩生田経産相ら5カ国の出席者が退席したが、ロシアが侵略を続けている限り、こうした姿勢を継続することが重要だ。
経産相らが退席したのは21日からタイのバンコクで開かれていたアジア太平洋経済協力会議(APEC)貿易相会合。日米中ロなど環太平洋の21カ国・地域が参加した。
この会議でロシアのレシェトニコフ経済発展相が発言した際に、萩生田経産相とタイ米通商代表部(USTR)代表のほか、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの計5カ国の出席者が退席し、ロシアに抗議する姿勢を示した。日本としてはこうした会合で退席するのは異例だ。
事実、4月に米ワシントンで開催された主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議では、オンライン形式で出席したロシアの財務相が発言する際、米国、英国、カナダの代表らが、ロシアのウクライナ侵攻に抗議するために一斉に退席したが、日本の鈴木財務相は退席しなかった。ただし、鈴木氏はその後、残った議場でロシアを厳しく非難している。
退席して抗議するか、議場に残ってロシアを非難するかは判断が難しいところで、退席しても残ってもそれぞれ議論を呼ぶだろう。鈴木氏のように議場に残ってロシア批判を展開するのも日本外交のあり方だ。
だが、ここで重要な視点は、欧米諸国との協調だ。各国が協調して行動することがロシアへのメッセージとなる。そうだとすれば、一斉に退席することが合理的な判断と言うことになるだろう。
実は、G20財務相・中央銀行総裁会議後にG7の財務相・中央銀行総裁らの会合が開かれているのだが、この会合では「国際機関や多国間フォーラムは、もはやこれまでどおりにロシアとの間で活動を行うべきではない」などとして、ロシアのG20などへの参加を遺憾とする共同声明を発表している。
「国際機関や多国間フォーラムは、もはやこれまでどおりにロシアとの間で活動を行うべきではない」としているのだから、G7としてはこうした国際的な会合へのロシアの参加について反対する姿勢を示すべきだ。
しかし、ロシア寄りの国も多々ある中でロシア排除が困難な面があるのも事実で、G20財務相・中央銀行総裁会議でも、ロシアの財務相がG20を政治利用しないよう求め、いくつかの国の代表がロシアを支持したとされている。こうした理由でロシアの排除がかなわなければ、G7はロシアの発言の際には退席すべきしかない。
G7首脳会議もかつてはロシアが参加してG8と呼ばれていた。それがクリミア併合で参加資格が停止されている。
ロシアのウクライナ侵略はクリミア併合と比較できないほどの蛮行だ。各国が協調して国際機関の会合などから排除することも求めながら、当面は国際会合での一斉退席を続けることも重要だ。
(terracePRESS編集部)