参院選争点となった物価問題の現実
参院選がスタートし、各党の政策議論も活発になっている。こうした中で野党は物価上昇に対する政府の対応を批判している。野党やメディアの主張をみると日本だけが物価上昇に見舞われているかのような錯覚を受けるが、実は日本の物価は政府の対応などで、世界的にみれば物価上昇は抑制されている。これが日本の物価問題の現実だ。
経済協力開発機構(OECD)は5月4日、OECD加盟国全体の3月の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で8.8%上昇したと発表している。2月の同7.8%上昇からさらに1ポイント上昇している。
これに対し日本は2月が0.9%の上昇、3月は1.2%の上昇で、OECD平均を大きく下回っている。
3月の各国のCPIをみると、米国は8.5%、英国が6.2%、EUが7.8%、韓国が4.1%などとなっており、いずれも日本より高めに推移しているのが現実だ。もちろん、この傾向は3月以降も同様だ。
野党などの主張をみれば、あたかも日本が低金利政策を維持していることが米国との金利差を生み、それにより円安が進み、輸入物価の高騰による国内物価の上昇が進んでいるかのような錯覚を受けてしまう。実際、そう思っている人は多いだろう。しかし、現実を見れば日本以外の各国の方が、物価が上昇しているのだ。
野党がそこに目を向けないのは、そこに注意がいけば、日本の金融政策がもたらした物価上昇という主張の構図が崩れてしまうからだろう。
国際的なエネルギー価格の上昇は世界的な新型コロナ抑制後の経済活動の活発化と、そこにロシアのウクライナ侵略が加わって起こったものだ。
もちろん、円安が影響していることは事実だが、現在の物価上昇は世界的な傾向なのだ。そこを見誤ると大きな間違いになる。
これについては岸田首相が15日の記者会見でも説明をしている。岸田首相は会見で物価上昇について「我が国の消費者物価上昇は、ほとんどがエネルギーと食料品価格の上昇。我が国だけではない。ガソリン代、電気料金支払額の増大、各種食料品の値上げ、ロシアによるウクライナ侵略が世界各国で国民の懐を直撃しています。正に、ロシアによる価格高騰、有事の価格高騰だ」と指摘。
その上で「ガソリン、軽油価格の高騰については激変緩和措置を講じている。これにより、例えばガソリンについては制度がなければ、1リットル当たり210円であるところ、170円程度の水準に抑えている。その結果、ウクライナ侵略後のガソリン価格の値上がり幅で見ると、日本は欧米各国に比べ、半分程度の水準にとどまっている」と述べている。
こうした現実があるにもかかわらず、立憲民主党などの野党が、政府が何もしていないといわんばかりの主張をしているのは、参院選を少しでも有利にしたいがためだけなのだ。
もちろん、物価問題は家計の収入にも大きく関係する。物価が上昇しても家計収入がそれを上回れば、歓迎すべき状況となる。
これについても明るい兆しが出ている。連合の調査では、今年の春闘では、平均賃金方式で回答を引き出した 4,331 組合の「定昇相当込み賃上げ計」は加重平均で 6,049 円・2.09%となっているのだ。
こうした状況をすべて認めたくないのが野党なのだろう。
(terracePRESS編集部)