年率21.4%増は本格的回復への出発点
新型コロナウイルス感染症により大きく落ち込んだ経済が回復傾向を示している。感染拡大の防止と経済回復策の両立が効果を上げたと言えるが、本格的な回復の道のりはまだ半ばなのが実態だ。政府は現在、感染防止策と経済対策のそれぞれを緩急つけながら実施しているが、さらに続けることが本格的な回復への道筋となる。
内閣府が先ごろ公表した2020年7~9月期の国内総生産(GDP、季節調整値)の速報値は、実質で前期比5.0%増、年率換算は21.4%増の大幅な増加となった。4~6月期が前期比7.8%減、年率換算27.8%減という大幅な落ち込みだったために、前期比ではプラス成長となった。
しかし、前年同期比では依然として5.8%減となっており、経済の縮小傾向に歯止めがかかったとは言えない。
7~9月期のGDP成長率5.0%増を寄与度でみると、国内需要が2.1ポイント、財貨・サービスの純輸出(輸出-輸入)が2.9ポイントとなった。
内需を需要項目別にみると、民間最終消費支出(民需)が4.7%増、政府最終消費支出(公需)が2.2%増となった。
民需のうち民間最終消費支出が4.7%増だったものの民間企業設備は7.9%の大幅減となっており、7~9月期のGDP成長率は家計、すなわち個人消費がけん引した構図となっている。個人1人当たりに10万円を支給した特別定額給付金などが個人消費の増加につながったのだろう。
その一方で企業活動がまだ回復していないため、個人消費が息切れすれば再び減少に向かう恐れもある。
また、雇用者報酬の動向をみると、4~6月期は3.8%減だったが、7~9月期は0.5%増となり、前期の大幅なマイナスから回復する傾向を示している。
しかし、これも前年同期でみると、3.5%減だった4~6月期に続いて7~9月期も3.0%減となっており、わずかな回復傾向をみせたが、大幅な落ち込みと言う状況は変わっていない。
以上のように7~9月期の数字だけで判断すれば急速な回復を示していると言えるが、その中身をみれば日本経済の足取りは依然として重いものとなっているのが実態だ。
ただし、その点については欧米諸国も同様だ。だからこそ、日本を含め各国とも今後の経済対策に左右されるだろう。
7~9月期のGDPについて西村経済財政担当相は16日午前の記者会見で「経済は着実に戻っているが、持ち直しの動きは途上だ」との認識を示したうえで「成長力の強化が必要だ」「デジタル改革やグリーン社会の実現のため、あらゆる政策手段を動員して取り組む」などと述べている。
菅政権は現在、感染拡大の防止との折り合いをつけながら経済の回復に向けた施策を展開しているが、その効果は徐々に出ており、さらに確かなものにするためには、官民挙げた協力が必要となっている。
(terracePRESS編集部)