「地方創生テレワーク」を現実のものに
政府は地方創生に向けた5カ年計画「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の改定を検討している。新型コロナウイルス感染症の拡大で、観光業など地方経済も大きな影響を受けているが、その上でいかに地方創生を進めるかがポイントになる。ポストコロナ社会に備えてテレワークの推進や観光の高付加価値化、魅力ある地方大学作りなどさまざまな方策が検討されている。
菅首相は臨時国会の所信表明演説で「観光や農業改革などにより、地方への人の流れをつくり、地方の所得を増やし、地方を活性化し、それによって日本経済を浮上させる」と述べ、地方の活性化が日本経済の活性化につながるとの認識を示している。
「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を検討するのが、「まち・ひと・しごと創生会議」で、「人口急減や超高齢化への対応、各地域の特徴を活かした自律的で持続的な社会の創生に関する重要事項を調査審議する」とされている。安倍政権が2014年9月に首相を本部長とする「まち・ひと・しごと創生本部」とともに設置した。
安倍政権時代は安倍首相が同会議の議長を務めていたが、菅政権発足に伴い、議長が坂本地方創生担当相に変更され、構成員も総務、厚労、農産、経産、国交、文科の各閣僚と有識者9人となった。
外形上は議長が首相から担当相になり、構成員も減ったことになるが、坂本担当相は「大勢の閣僚と首相が出席するとなると、形骸化の傾向もある。議論の時間を十分に確保し、実動部隊として機能的な体制をとっていく」などと説明している。
テレワークについては、新型コロナの拡大を契機として、地方で暮らしてもテレワークで都会と同じ仕事ができるとの認識が拡大したとの前提に立ち、地方におけるサテライトオフィスでの勤務など地方創生に資するテレワークを意味する「地方創生テレワーク」を推進し、地方への新しい人の流れを創出し、東京圏への一極集中を是正することで、地方分散型の活力ある地域社会の実現を図る考えだ。
観光の高付加価値化では今後、宿泊施設の高付加価値化や新たなビジネス展開や事業再生の支援などによる観光産業の収益力向上、デジタルトランスフォーメーション推進による観光サービスの変革を支援する見込みだ。また、ワーケーションなどの「新たな旅のスタイル」の普及を促進し、旅行需要の平準化に取り組む。
また地方の大学には、オンリーワンの価値を創出し、「選ばれる大学」を目指したり、地域でのプレゼンスを存分に発揮したりするよう要請。大学の知的・人的リソースを生かした新産業創出や第二創業など、地域産業の活性化のハブとなるよう求める。
地方の活性化は〝古くて新しい課題〟だ。「地方活性化」の必要性は常に叫ばれているが、現実には地方圏は衰退するばかりだ。新型コロナという危機を少しでもチャンスに変え、名実ともに地方が活性化する施策が急務となっている。
(terracePRESS編集部)