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2020.12.24

財政政策の意味を無視するメディア

政府が、過去最大となる一般会計総額106兆6100億円の2021年度政府予算案を編成した。新型コロナ対策やデジタル化、グリーン社会の推進というバランスの取れたメリハリのついた予算ともいえる。しかし、メディアは「一般会計総額が過去最大」ということのみを取り上げ、「歳出圧力の結果」「財政膨張」などと的外れの批判をしている。財政政策の効果すら無視している。

 

朝日新聞は22日朝刊で「来年度予算案 財政規律のたが外れた」と題した社説を掲載し「財政規律のたがが外れてしまったと言うほかない」「25年度に国と地方の基礎的財政収支を黒字化する目標は有名無実となってしまった。優先度の低い事業はやめ、必要な事業の財源をきちんと確保する。そんな基本を忘れていては、財政の健全化など望むべくもない」などと批判している。

 

毎日新聞も「過去最大の予算案 コロナに乗じた野放図さ」との社説で「暮らしを守る支出は惜しむべきではない。だからといって財政規律を緩めていいわけではない。歳出を野放図に増やすと、将来世代に重いつけを負わせる」と述べている。

 

読売新聞も「来年度予算案 借金頼みの財政膨張は危うい」と題した社説で「感染拡大が長引けば、再び歳出圧力が強まりかねない。査定の甘い補正で、予算の増大を招く事態には注意が要る。政府は、借金頼みの歳出増が持続可能ではないことを、肝に銘じるべきだ」と指摘している。

 

いずれの社説も「財政規律が緩んでいる」「歳出圧力」など、いかにも政府が野放図に予算を編成したかのような印象を与えている。

 

しかし、現在は20年度の実質GDP成長率がマイナス5.2%になると見込まれる未曽有の経済危機であることを忘れてはならない。なにしろ2020年7-9月期の末時点で30兆円の需給ギャップがあるとされ、そのために政府は事業規模73.6兆円に達する追加経済対策を策定し、同時に15兆円超の20年度第3次補正予算案を編成したわけだ。

 

政府は、3次補正と今回の予算で、21年度に実質GDPで4.0%の成長を確保することを目指しているのだが、「財政膨張」「タガが緩んだ」などと批判するメディアは財政政策によって経済を下支えし、民需の自律的な回復を促進するという視点はまったく持ち合わせていないのだろう。新型コロナの影響を過小に見積もっているからこそ、そうした視点になるのだ。

 

もちろん、財政政策の拡大は将来世代の負担を増すことになる。だからこそ平時は財政規律を厳守し、財政再建を進めなければならない。しかし、緊急時は違う。財政を拡大することで、景気を刺激し、日本経済の自律的な回復を実現するしか方法がないのだ。

視野狭窄で批判ありきのメディアでは、日本経済にとって真に必要な対策は論じられない。

 

(terracePRESS編集部)

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