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徴用工却下でも日韓関係は改善できない

旧朝鮮半島出身労働者、いわゆる元徴用工らが日本企業16社に損害賠償を求めた裁判で、ソウル中央地裁は原告の訴えを却下した。4月の元慰安婦の原告団敗訴に続き、正常な判断と言える。しかし、原告は控訴する方針だ。元慰安婦問題でも同じだが、問題の解決には韓国政府の対応が不可欠で、その韓国政府は何も具体的な動きを示していない。日韓問題の改善はまだ見通せない。

 

今回の判決は、1965年の日韓請求権協定により原告の請求権が消滅したとは言えないと判断しつつも「訴訟での請求権の行使は制限されると解釈するのが妥当だ」とした。

2018年に韓国最高裁(大法院)は「強制動員に対する賠償請求権は協定の適用対象に含まれていない」として日本企業側に賠償を命じているが、今回は、その最高裁判決を否定するものとなった。

 

原告らは1人あたり1億ウォン(約1千万円)の賠償を求めていたが、原告側は今回の判決を受け「大法院判決と正反対の判決で非常に不当だ」として控訴する方針だ。

 

しかし、そもそもこの最高裁判決が国際法違反だったのだ。日韓請求権協定は、日本も韓国も、企業、個人を含めて相手国への請求権を認めておらず、それにより「完全かつ最終的な解決」としている。

 

「完全」であるからこそ、当然、強制動員に対する賠償請求権も協定の適用対象に含まれている。その上で当時、日本政府は韓国政府に対し、無償3億ドル、有償2億ドルの計5億ドルを資金供与している。これは、当時の韓国の国家予算の約1.6倍相当だ。そして、その資金は韓国国民への賠償にも使われるはずだった。

 

日韓間では完全に解決しているのだから、元徴用工に請求権があるか否かは、すべて韓国国内の問題であり、韓国政府が解決すべき問題だ。しかし、その韓国政府が具体的な対応をしていない。元慰安婦問題もそうだが、そこが日韓関係を改善できない大きな理由だ。

 

現在の状況は、元徴用工問題でも元慰安婦問題でも、韓国側にボールがある。日本側にあるわけではない。だから、日本から何も改善に向けた動きをする必要はない。否、すべきではない。

 

ロンドンで開かれたG7外務・開発大臣会合に出席した茂木外相と韓国の鄭義溶外交部長官は5月5日に、20分ほどの会談をしたが、これは1年3カ月ぶりに開かれた外相会談だった。

 

菅首相と文大統領はこれまで電話での会談は行っているが、対面しての会談はしていない。6月11日から英国で始まる先進7カ国首脳会議(G7サミット)には文大統領もゲストとして出席する予定だが、日韓首脳会談は行われない見通しだ。行われるとしても、ホテルの一角での〝短時間の接触〟だろう。

日本政府は、韓国から実効性のある具体案が示されていないため、対話する環境は整っていないと判断しているためだ。

 

韓国司法が正当な判断を示したことは評価できる。しかし、これは解決の入り口にたった、否、入り口が見えたに過ぎない。

 

(terracePRESS編集部)

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