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2021.06.14

法人税率の引き下げ防止の意味

世界的な法人税率の引き下げ競争が抑制される可能性が出てきた。先進7か国(G7)財務相・中央銀行総裁は先ごろ、法人税の最低税率について15%以上を目指すことで合意した。法人税をめぐっては、野党からすぐ「企業から税金をとればいい」といった考えが示されるが、法人税を上げれば国内経済の空洞化を招くことは国際的な事実だ。今回の動きは各国が産業の空洞化を懸念した結果だ。

 

G7財務相・中央銀行総裁が5日に発表した声明で「各国共通の最低税率を15%以上にすることで一致した」としている。

最低法人税率をめぐる協議は、世界各国の法人税引き下げ競争に歯止めをかけようとするもので、数年前から続いていた。今後は、今年7月に開催される20か国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議において最終合意を目指すとしている。

もし実現すれば、世界各国の法人税引き下げ競争に歯止めがかかることになる。

 

今回の合意が「歴史的」なものであることは事実だが、その一方で、実現に向けては高いハードルもある。中国やロシアが加わるG20で、仮に合意したとしても、多くの国々の合意をどう調整するのかが不明だからだ。

 

なぜこうした法人税率引き下げに歯止めをかけるのかと言えば、法人税を安くすれば、税金の支払いを抑えたいという企業が、高い国から移転してくる。移転された国は、その企業本社がなくなり、その結果、産業の空洞化が進むこととなる。

事実、企業を呼び込みたいシンガポールは、法人税率が17%で地方税なども課税されない。

 

では日本はどうか。財務省によると日本の法人実効税率は29.74%だ。法人税率としては23.2%だが、これに地方税を加えた法人実効税率は29.74%となる。

これを先進各国と比べると、英国が19%、イタリアが24%、フランスが26.5%、カナダが26.5%、米国が27.98%、ドイツが29.93%などとなっている。日本より高いのはドイツだけで、決して日本の法人実効税率が低いとは言えない状況だ。

 

こうした状況の中で政府は法人税を決めなければならないが、高く設定すれば海外への移転を誘引し、産業の空洞化を招き、低く設定すれば税収が確保できないことになる。だから、この両方をにらみつつ、微妙なバランスを取りながら決定しなければならない。

 

野党は、ことあるごとに「法人税の引き上げ」を主張してきたが、法人税を引き上げれば、グローバル競争の中で企業は海外に移転し、その結果、国民生活に多大な影響が出ることを理解していないのだ。

 

パンデミックとなった新型コロナウイルス感染症は、各国政府に新たな財政支出を余儀なくした。もちろん日本も例外ではなく、米国に次ぐ世界第2位の規模の財政支出を実施し、医療体制の整備や経済の下支えをしている。その財源は国債でまかなわれているが、今後返済していくことになる。

日本経済が継続的な成長を確保するためには、どのような税制がいいのか、野党のような選挙を狙った主張ではなく専門的な判断が必要となる。

 

(terracePRESS編集部)

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