参院選で陰りが明確になったオール沖縄
参院選は自民党など与党の大勝となったが、沖縄では無所属現職でオール沖縄が支えた伊波洋一氏が、新人で自民公認の古謝玄太氏との激しい競り合いの結果、議席を守った。しかし、古謝氏とは2,888票のまさに僅差。オール沖縄は普天間飛行場の代替施設である辺野古の飛行場建設に反対しているが、日本、沖縄の安全保障や経済活性化など現実的な政治課題を前に陰りが明確になった。
伊波氏は当選後のあいさつで「沖縄の民意の勝利、辺野古新基地に『ノー』という民意の勝利です」と声を張り上げた。しかし、勝利とは言っても薄氷の勝利だ。
前回、2019年7月の参院選ではやはり無所属でオール沖縄が支援した高良鉄美氏が当選しているが、自民党候補者との票差は63,903票だ。それが今回は2,888票差。伊波氏がいくら「沖縄の民意の勝利」と強調しても、沖縄の人々の強い意志が示されたわけではないことは事実だ。
沖縄県の在日米軍基地の負担を縮減する必要があることは改めて言うまでもない。日米両政府はその方向に向かって努力を続けており、普天間飛行場についても機能をグアムや日本国内の別の基地に移設している。その中で、辺野古の代替施設は、残るオスプレイなどの運用のために米軍のキャンプシュワブ内に飛行場を建設するというものだ。
一方、沖縄県石垣市の尖閣諸島の周辺海域や領海には中国海警局の公船がたびたび進入し、最近は中国海軍のフリゲート艦なども示威行動をしている。また、石垣島は台湾とおよそ270キロの距離でしかないが、その台湾海峡の緊張が高まっており、その事態の推移によっては沖縄県も大きな影響を受けざるを得ない。
こうした状況を前提にすれば、日本や沖縄の安全保障のためには日米安保の重要性はますます高まっており、伊波氏ではないが、今回の参院選の〝民意〟をみれば、普天間飛行場の廃止に向けた辺野古代替施設の建設を多くの人が容認しているということなのだ。
また、選挙戦では古謝氏が沖縄県経済の活性化を強く訴えた。新型コロナウイルスに加えて、ロシアのウクライナ侵略を契機とした世界的な原材料の高騰などの影響で、沖縄経済は深刻な打撃を受けている。そのため、沖縄県にとって足元の経済の活性化は喫緊の課題であり、多彩な産業育成など県経済社会の構造改革も待ったなしの重要なテーマだ。
オール沖縄などの主張をみれば、沖縄県の政策課題は辺野古の代替施設の建設だけかのような錯覚に陥ってしまうが、県民の生活を将来にわたって豊かなものにするには、経済問題に取り組むことが不可欠だ。
オール沖縄は、普天間基地の辺野古移設に反対するための共同体だ。しかし、安全保障に関しても、経済問題に関してもオール沖縄の主張はすでに限界となっている。
9月11日には沖縄県知事選が投開票される。参院選は国政の代表を選ぶものだが、知事選はまさに沖縄のリーダーを選ぶ選挙だ。それだけに、辺野古移設反対だけでいいのか否かが問われることになる。
(terracePRESS編集部)