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2021.02.09

菅首相の縦割り打破が後押しした「流域治水」

全国各地で河川の氾濫など深刻な水災害が相次いでいる中で、菅政権は先ごろ、特定都市河川浸水被害対策法の一部改正など「流域治水関連法案」を閣議決定した。河川の流域全体を俯瞰し、あらゆる関係者が協働する「流域治水」を実現し、水災害の防止を目指す考えだ。

 

2019年の東日本台風や2020年7月豪雨など近年、全国各地で水災害が激甚化したり、頻発化したりしている。こうした水災害は気候変動が影響しているとされており、21世紀末には全国平均で降雨量が1.1倍、洪水発生頻度は2倍になるとの試算もある。

 

こうした降雨量の増大などに対応するためには、ハード整備の加速化などや治水計画の見直しに加え、「上流・下流」だけでなく「本川・支川」を含めた流域全体を俯瞰し、国、流域の自治体、企業、住民などといったあらゆる関係者が協働して水害防止に取り組む「流域治水」が不可欠となる。「流域治水関連法案」はこの取り組みの実効性を高めるための法的枠組みとなっている。

 

流域治水に関係する省庁は国土交通省だけでなく、総務省や経済産業省など多くの省庁が関わっているとされ、それだけに実効性を高める法的枠組みがないと縦割り行政の中で、進まない恐れもあった。

 

菅首相は官房長官の時代から、農水省や経産省などが所管する利水ダムの洪水調節機能の活用に積極的で、事実、2020年9月16日の首相就任会見でも「7年8か月の官房長官を務める中で、なかなか進まない政策課題というのは、大体役所の縦割りや前例主義、これが壁になってできなかった。ダムについて言えば、やはり省庁の縦割り、同じダムでも事前放流できるところとできないのがある」などと指摘していた。

菅首相が「縦割り行政打破」を掲げたことが「流域治水」の実現を後押ししたことは間違いないだろう。

 

今回の法案ではまず、「流域治水の計画・体制の強化」として、流域治水の計画を活用する河川を拡大するほか、流域水害対策に係る協議会の創設と計画の充実を図る。

その上で、「氾濫をできるだけ防ぐための対策」として①利水ダムの事前放流の拡大を図る協議会の創設②沿川の保水・遊水機能を有する土地を確保する制度の創設③雨水の貯留浸透機能を有する都市部の緑地の保全④認定制度や補助等による自治体・民間の雨水貯留浸透施設の整備支援-などを実施する。

 

また「被害対象を減少させるための対策」としては、住宅や要配慮者施設などの浸水被害に対する安全性を事前確認する制度を創設したり、災害時の避難先となる拠点の整備を推進したりする。

こうした施策を実施し、浸水想定区域を設定する河川数を2020年度の2,092河川から、2025年度には約17,000河川とすることを目指すという。

 

新型コロナ対策も重要だが、菅政権のこうした地道な取り組みが水災害により犠牲者が出ることを防ぐことになる。

 

(terracePRESS編集部)

 

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