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感染少ないからこそワクチン確保の難しさも

新型コロナウイルス感染症のワクチンをめぐり政府の対応についてさまざまな批判が出ている。接種の実施は自治体の役割となるが、全国知事会も計画の遅れなどを批判している。確かに政府の対応にも課題は残るのかもしれないが、そもそも日本の場合は死亡者も少なく、欧米のように数十万単位の死亡者が出た国々と競合してワクチンを確保する難しさもあり、見通せない部分が残ることも理解すべきだろう。

 

2月27日に開かれた全国知事会の新型コロナウイルス対策本部のオンライン会合では、「(供給)スケジュールや量が不透明で苦慮している」「情報に振り回され、進めていた接種計画を見直さざるを得ない。事態は収束どころか混乱を来している」など、接種計画が当初よりも遅れていることに不満が出た。

 

接種を実施する自治体は、スケジュールに沿って態勢を整える必要があるが、その確保できるワクチン量の見通しが確定しないため、現場での実施計画も策定できないという。確かに、政府は当初、65歳以上への接種を「3月下旬」としていたが、それが「4月1日以降」「本格接種は4月26日からの週」と計画が順次ずれ込んでいる。

 

日本が現在利用予定のワクチンメーカーはファイザー社、アストラゼネカ社、モデルナ社だが、ファイザーとモデルナが米国、アストラゼネカが英国の企業だ。

 

新型コロナによる日本の死亡者は約8000人だが、米国も英国も比べ物にならない犠牲者を出している。米国は約51万人、英国は約12万人だ。それ以外でも欧州各国の状況は深刻で、イタリア約9万7000人、フランス約8万6000人、ドイツ約7万人などとなっており、日本とは状況がまったく異なっている。

 

そのような世界的な状況の中で、各国によるワクチン争奪戦が繰り広げられているのが実情だ。もちろん、日本もファイザーとは2021年内に1億4400万回分の供給を受ける契約を締結したり、アストラゼネカとは1億2000万回分、うち3000万回分は2021年3月までに供給を受けることについて契約を締結したりしているが、これがなかなか順調に進んでいない。

 

ワクチンをめぐっては、英国で自国優先の動きが出たり、欧州連合(EU)が輸出の許可制を導入したりした。いずれも契約ベースで確保していても、実際の供給遅れに危機感を募らせたためだ。

日本はそうした多くの犠牲者を出している国々と競合してワクチンの確保をしなければならないわけだ。

 

もちろん、接種現場である各地の自治体に混乱を招くことは避けなければならないが、決して日本政府がワクチンの確保に努めていないわけでもない。新型コロナウイルスをめぐる各国と日本の状況の違いやワクチン確保の難しさがあることは事実で、計画通り順調に進むと期待することがそもそも認識不足なのだろう。

 

(terracePRESS編集部)

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