自治体が牽引する2050カーボンニュートラル
菅政権は2050年のカーボンニュートラルに向け、さまざまな施策の展開をスタートさせている。脱炭素社会への移行を新たな成長のシーズと捉え、これからの日本を切り開く重要な戦略だ。政府は、地域での再生可能エネルギーの持続的拡大を図るため、「国・地方脱炭素実現会議」を設置しており、自治体もカーボンニュートラルの牽引役になりそうだ。
カーボンニュートラルで環境省が特に力を入れているのは2030年までの期間だ。特に2025年までを集中期間とし、政策を総動員することで先行的なカーボンニュートラルの地域を国内に作り、その先行的なところから〝脱炭素ドミノ〟を次々と起こしていくという。
「2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロ」を表明した「ゼロカーボンシティ」は2月15日時点で、東京都、京都市、横浜市など262自治体(29都道府県、153市、2特別区、61町、17村)に達している。表明した自治体の人口は約9,569万人となっている。
地域での取り組みの主流となるのは太陽光や風力、地熱などの再生可能エネルギーとなるが、導入するにはさまざまな課題もある。例えば、景観や騒音のトラブルなど、地域と共生しない再エネでは、地域で歓迎されないため、持続的な利活用ができない。このため、再エネの地域との調和や適切な維持管理を求める条例の制定など条件整備が必要となる。
カーボンニュートラルの実現にはイノベーションが不可欠とされているが、環境省はイノベーションを待たずに、適用可能な既存技術を活用して、足元からできることを直ちに実行するという方針で、2025年までの期間を「集中期間」と位置づけ、条件整備が進んだ地域に「屋根貸しなど未利用再エネの最大活用」「住宅・公共施設の省エネ性向上」「住民・観光客向けの再エネEVカーシェア」などさまざまな重点対策を実施する方針だ。
同時に「公共施設の電力を100%再エネ」「ゼロエミッションの公共交通整備」など先行モデルケースづくりも進め、2025年までに先行的な脱炭素実現地域を創出し、30年から全国でできるだけ多くの〝脱炭素ドミノ〟を発生させたい考えだ。
日本は、化石燃料の輸入のために2019年で総額約17兆円を海外に支出しているが、環境省の試算では、日本には電力供給量の最大2倍の再生可能エネルギーのポテンシャルが存在しているという。
もちろんカーボンニュートラルを実現するためにはさまざまなイノベーションが不可欠で、菅政権はすでに、技術開発に取り組む企業を10年間にわたって支援する総額2兆円の基金を設ける方針だ。また、国民のライフスタイルの変化も求められる。カーボンニュートラル実現には官民一体となった取り組みが必要だが、中でも地方自治体の役割が重要となっている。
(terracePRESS編集部)