またもや数合わせに終わる次期衆院選の野党共闘
近年、国政選挙となると「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」なる団体、いわゆる「市民連合」が結節点となり、野党各党は、市民連合との政策文書に署名することで共闘関係を作ってきた。その市民連合が先ごろ、野党各党に総選挙で協力体制の構築を早期に実現することなどを要請した。毎度のことだが、次期衆院選でも政策に具体性を持たせない数あわせの野党共闘ができるのだろう。
市民連合の申し入れは2月に立憲民主、国民民主、共産、社会民主、れいわ新選組の各党に行われた。
申し入れ書では「今年秋までに行われる衆議院総選挙は、国民にとって危機を打開するための政治的選択の機会として、さらに重要な意義を持つことになる。その選択の時に、立憲野党は、まとまって次の日本を切り開くための選択肢を提示する責務を負っている」などとし、「総選挙における選挙協力の明確化」や「総選挙における共通政策」などを要請している。
特に「総選挙における共通政策」では、「昨年市民連合が提出した 15 項目の政策要望を踏まえ、政権選択の戦いの旗印となる重要政策について早急に共有を図ることが求められる」などとしているのだが、この15項目の政策要望自体が噴飯物なのだ。
15項目の1番目は「立憲主義の再構築」とされ、「自民党が進めようとしてきた憲法『改定』とりわけ第9条『改定』に反対し、改憲発議そのものをさせないために全力を尽くす」としているが、そもそも憲法改正をめぐっては、立憲民主党や国民民主党などは改正論議自体の否定はしていない。憲法改正という政党にとって重大なテーマで姿勢が異なる限り、共有などできないはずだ。
また、「消費税負担の軽減を含めた、所得、資産、法人、消費の各分野における総合的な税制の公平化を実現し、社会保険料負担と合わせた低所得層への負担軽減、富裕層と大企業に対する負担の強化を図る」「出産・子育て費用の公費負担を抜本的に拡充」「地域における保育、教育、医療サービスの拡充により地域社会の持続可能性を発展させる。災害対策、感染対策、避難施設の整備に国が責任をもつ体制を確立する」などと、聞こえのいい文言はならんでいるが、どのように日本が成長を遂げていくのかという視点は完全に欠如しているのだ。
さらに恐ろしいのが安全保障問題で、日米同盟への言及はない一方で、日中間については「地道な対話」で、北朝鮮に関しては「日朝平壌宣言に基づき北朝鮮との国交正常化、拉致問題解決、核・ミサイル開発阻止に向けた多国間対話を再開」などと国連安保理の制裁決議すら無視しているのだ。
市民連合の申し入れには共産党の小池書記局長が「申し入れの内容は100%同意できる。政策合意を新たにし、野党統一で4月補選から総選挙まで勝利していきたい」と諸手を挙げる積極的な発言をしているが、こうした要望に沿ってできる野党共闘は選挙目当ての野合であり、共産党だけが喜ぶのだろう。
(terracePRESS編集部)