新型コロナで急増した政府の〝借金〟
新型コロナウイルス感染症対策で政府は、医療対策や雇用確保、飲食店や事業者支援、経済の下支えなどを目的に、2020年度には3次にわたる補正予算を編成、新型コロナ対策としては米国に次ぐ規模の財政支出を行った。このため、国債の増発による政府の〝借金〟も大幅に増加した。いずれこの借金は日本国民が負担するべきもので、だからこそ野放図に増やすこともできない。ここが現実の政策を遂行する政府のハンドリングの難しいところだ。
財務省が先ごろ公表した2021年3月末現在の「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高」によると、内国債、借入金、政府短期証券などの残高を合計した「国の借金」が2020年度末で過去最大の1216兆4634億円に達した。
19度末に比べると101兆9234億円増となり、1年間の増加額も過去最大となった。
新型コロナウイルス対策として、3次にわたり大型の補正予算を編成したことが影響した。もちろん、補正予算には新型コロナには直接関係のない災害対策なども入っているが、地震や台風、集中豪雨など大規模災害が頻発する日本にとって災害対策は不可欠なもので、同時に経済対策にもなり、補正予算に盛り込む合理性が十分ある。
「1216兆4634億円」という数字と日本人の人口推計値で単純計算すると、国民1人当たりの借金は約987万円ということになる。
公債は21年度予算でも建設公債を6兆3410億円、特例公債を37兆2560億円発行しているから、現実にはすでに「1216兆4634億円」という数字も過去のものとなっている。やがて国民1人当たりの借金も1000万円を超すことになるだろう。
だからこそ、ポストコロナの経済成長が重要になり、そのためには菅政権が進めているデジタル化やグリーン社会の創出による経済の活性化が不可欠となる。
政府はそのため、デジタル化やグリーン社会の実現以外にも人材投資、中小企業をはじめとする事業の再構築などで生産性を向上させ、実質2%程度、名目3%程度を上回る成長率を実現することに注力している。
同時に歳出改革の推進も不可欠で、その中で、社会保障制度の持続可能性を高めるなど改革をすることで、現役世代が将来に希望を持ち消費を促進することなども必要だ。
日本が「借金大国」であることは間違いない。しかし、それは希望のない「借金大国」ではない。生産性の向上などを起点とした経済の活性化と歳出改革に取り組むことで新たな未来が開ける。
社会保障や公共事業などさまざま行政サービスを提供するための経費(政策的経費)を、税収などで賄えているかどうかを示す指標にプライマリーバランス(PB)があるが、政府は現在、2025年度のPB黒字化目標を掲げている。新型コロナによりPBも悪化したが、これに対応することが日本の将来を決めるといっても過言ではない。
(terracePRESS編集部)