政府が中小企業のM&Aを促進
中小企業経営者の高齢化、新型コロナウイルス感染症などの影響で企業の廃業など経営資源が散逸する可能性が懸念されている。中小企業の廃業などが拡大すれば、地域経済への影響も避けられない。このため政府は、今後5年間で実施する「中小M&A推進計画」を策定し、経営資源の散逸の回避や事業再構築による生産性の向上などを目指す。
M&Aには、自力での成長の限界等を背景に、更なる成長をするために戦略的に行う「成長志向型」、経営者の高齢化等を背景に、事業を継続するためにやむを得ず行う「事業承継型」、事業を継続しないものの、全部又は一部の経営資源を引き継ぐ「経営資源引継ぎ」の3つのタイプがあるとされおり、このうち約半分が「事業承継型」との試算もある。
M&Aは足下で年間3~4千件程度実施されていると推計されているが、潜在的にM&Aを考えている譲渡側の経営者や企業は57.7万との試算もあり、中小M&Aが円滑に進んでいるとは決していえない状況だ。
57.7万のうち約半分が「事業承継型」と推定されるわけだから、M&Aが進まなければ多くの中小企業がそのまま廃業となる恐れがあるわけだ。
こうした中小M&Aを支援する企業、機関もあるが、案件規模によって支援内容などに差があるなどM&A促進への隘路もある。
このため、「中小M&A推進計画」は、案件規模に応じるなど細かな対応が可能になるよう環境を整備する方向を打ち出している。
例えば、事業承継・引継ぎ支援センターなどの活動が、支援を必要とする譲渡側の中小企業の数が膨大で対応し切れていないため、「全国大の官民のマッチングネットワークの構築」や「創業希望者等と後継者不在企業のマッチングの拡充」などを図る。
また、全国的に大規模・中規模向けのM&A支援機関が活動しているが、中小企業にはその支援機関の支援の妥当性を判断するための知見が不足しているケースが存在している。このため、企業価値評価ツールの提供など支援の妥当性を判断できるようにする。
M&Aを促進するためには、企業側が事業承継の準備に早期に着手し、計画的に進めることが重要だが、事業承継は他の経営課題より後回しにされがちである。このため、企業健康診断など事業承継に着手するための気づきを提供する取り組みの拡充も図る。
このほか、地域の中小企業を重点的に支援するファンドなどへの特例措置の検討や、所在不明株主からの株式買い取りなどの手続きに必要な期間を5年から1年に短縮するための経営承継円滑化法の改正なども予定している。
「中小M&A推進計画」は、中小企業が培ってきた貴重な経営資源を将来につないでいくことが目的で、中小企業の淘汰が目的ではない。
菅政権は地域経済の活性化を政権の課題としているが、放置していればなくなってしまう経営資源を活かすことで、地域を活性化することも可能となる。
(terracePRESS編集部)