工場立地停滞で構造転換必要
地方経済の重要な推進役となるのが企業の生産拠点だ。住民の雇用先となったり、地域の企業からの資材の調達などをしたりすることで、地域の消費も確保できる。その生産拠点、すなわち工場の立地が2020年に大幅に減少するなど停滞している。日本の産業構造も急速に変わっており、地方も早急な構造転換が必要となっている。
2020年の工場立地動向調査によると、製造業などの工場立地件数は 826 件となり、前年に比べると19.3%の大幅な減少となった。工場立地面積は1148ヘクタールで、同11.1%減となった。
工場立地は5000件近くあったバブル景気時の1989年がピークで、現在はピーク時の4分の1程度に低迷している。
2020年の立地を業種別にみると、金属製品製造、輸送用機械製造の立地件数・立地面積が大幅に減少。立地件数・立地面積は食料品製造、金属製品製造、生産用機械製造、輸送用機械製造の上位4業種で減少となった。
工場立地に伴う設備投資額や雇用予定者数は、当然のことながら工場立地の件数に比例して推移するが、近年は1件当たりの設備投資額が10~15億円程度で推移。1件当たりの雇用予定者数は、減少傾向を示しており、この20年間で1件当たり40人から20人程度に減少している。
件数が減り、雇用人数も減るなど停滞が著しいが、さらに研究所の立地も前年の22件から16件になっている。
2020年の都道府県の転出入状況をみると、転入が多かったのは山形、茨城、栃木、静岡、三重、滋賀、山口、香川の各県で、転出が多かったのは埼玉、岐阜、愛知、京都、大阪、岡山、愛媛の各府県。
これを10年間でみると、茨城、栃木、群馬、埼玉、京都、兵庫などの府県が転入過多、転出過多は圧倒的に東京都、大阪府が多かった。
工場の立地の選定場所には2つの条件があるとされている。1つは本社が所在する都道府県への立地で、6~7割が県内立地とされている。
もう一つが高速インターチェンジ(高速IC)との近接性で、立地件数の約4割が高速ICから5km以内の立地となっている。
新型コロナウイルス感染症の拡大でリモートワーク、テレワークの導入など、働き方が変わってきている。またワーケーションという、バケーションと仕事の両方を行う生活の仕方も注目を集めている。それに歩調を合わせるように、本社自体を地方に移転する企業も出始めている。
工場立地の現状をみれば、地域経済活性化策の中心に生産拠点の誘致を据えるのは、もはや現実的な選択ではない。今や、各地域が工場の誘致ではなく、テレワークなどを考えている都市住民の誘致、さらに企業の本社の誘致に力を入れる時代になっている。
(terracePRESS編集部)