許されない憲法改正議論の停滞
憲法改正手続きに関する国民投票法改正案が今国会で成立する見通しとなった。これまでは、憲法改正議論の入り口が詰まっていたわけだが、今国会でその隘路が取り除かれたわけだ。憲法改正を巡っては国民の意見も真っ二つに分かれているが、少なくとも活発な議論をすることが政党の責務であることは間違いない。
国民投票法改正案については、立憲民主党の主張を取り入れ、施行後「3年をめど」にCM規制などに関する措置を講ずることが付則明記された。しかしそれは、これからの3年間で具体的な規制についてだけ議論する、ということではない。
CM規制の検討を進めるにせよ、同時に、憲法改正そのものについて議論をすることが不可欠で、それが国民の負託に応えることになる。
憲法改正については自民党が、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3つの基本原理は堅持したうえで、改正の条文イメージとして、①自衛隊の明記 ②緊急事態対応 ③合区解消・地方公共団体 ④教育充実の4項目を示している。
例えば、自衛隊の明記については、法律家などに存在する「自衛隊違憲論」を解消するため、現行の9条1項と2項を維持しながら、自衛隊を明記するとともに自衛の措置(自衛権)についても言及すべきとしている。
また、最近は新型コロナウイルス感染症で緊急事態対応が注目を集めているが、これについては、緊急事態においても、国会の機能をできるだけ維持しつつ、それが難しい場合、内閣の権限を一時的に強化し、迅速に対応できるしくみを憲法に規定することを想定している。
自民党以外にも、国民民主党は昨年12月、「憲法改正に向けた論点整理」を公表している。国民民主党も現行憲法の基本原理は堅持しながら、地方自治や国会、裁判所、自衛隊や安全保障、緊急事態などについて論点をまとめたり、条文にイメージを示したりしている。
これに対し、立憲民主党は国民投票法改正案に賛成したものの、次期総選挙を念頭に、憲法改正論議自体も否定する共産党とさっそく〝和解〟に乗り出している。驚くべきことに、憲法改正が大きな政治テーマであるはずなのに、憲法記念日の枝野代表のコメントでは、新型コロナをめぐる政府批判一色で、憲法改正議論に向けた立憲のスタンスすら明示しておらず、議論の「ぎ」の字もない。
憲法は施行後74年が経過している。その間、時代は流れ、内外の社会環境、経済環境、国際環境は激変している。施行から70年以上が経過している憲法が時代にそぐわなくなったことは確かで、内容は別として、改正の是非、改正内容についての議論は不可欠だ。
それすら否定する政党は、もはや政党と呼ぶに値しないのではないか。国民投票法改正案の成立で、議論の準備は整う。各党が憲法改正議論に真摯に取り組むことが求められ、停滞は許されない。
(terracePRESS編集部)