普天間基地周辺住民の安全を考慮しないオール沖縄
「政治は結果」。安倍首相が好んで口にする言葉だ。もちろん、安倍首相だけではない。政治家なら当然、そのような思いは持っているだろう。2017年10月の衆院選で大敗した民進党の前原誠司代表(当時)は総選挙後の同党全国幹事会で「分裂選挙を余儀なくされ、結果的に自民党を大勝させてしまった。政治は結果がすべて。責任を取る」と頭を下げた。
どんなに高い理想やスローガンを掲げても、政治は結果責任を問われるのだ。その理由は明白で、高い理想やスローガンでは国民の生活は向上しないからだ。そのため、ベストが困難ならば、セカンドベストを選択する、ということも政治なのだ。
那覇市で11日、米軍普天間飛行場の移設先となる名護市辺野古の飛行場建設に反対する集会が開かれた。共産党や市民活動家などでつくるオール沖縄の主催で、主催者発表によると7万人が集まったという。
集会が開かれた那覇市の奥武山陸上競技場は、そもそも観客の収容人員が9000人に過ぎず、フィールドなどを使ったとしても7万人が入るとはとても思えない。確かに、翁長雄志知事の急逝直後の集会だけに、せめて参加人数だけでも過大に発表して、世間の耳目を集めたいという主催者の思いは理解でいないことはない。しかし、その発表を真に受けて情報として記事にするメディアの姿勢は問われるべきだろう。
それはそうと、集会では参加者が「辺野古新基地 NO!」というプラカードを掲げ、工事の進展に強く抗議することをアピール。知事の職務代理者の謝花喜一郎副知事があいさつで、埋め立て承認の撤回について「知事の強い思いを受け止め、我々も毅然として判断していく」と述べたという。
確かに、翁長知事は承認の撤回を表明した。しかし、だからといって、もしそれを知事の職務代理者とはいえ、副知事が引き継ぐことに合法性、合理性があるかどうかは議論されなければならない。副知事は選挙を経た知事とは全く立場が異なるのである。
さて、「政治は結果責任」である。辺野古の飛行場建設問題は、普天間飛行場の返還と表裏一体だ。オール沖縄の人々が「辺野古反対」と声高に叫ぶことは、「普天間飛行場の周辺住民は当面、危険性があっても我慢しろ」と突きつけていることと同じだ。
これに対し、オール沖縄の人々は「いや、普天間は普天間で、返還させるべきだ」と主張するのだろう。しかし、現実の政治の中では優先順位を設けなければならないことなど山ほどある。
米軍基地の再編問題で最優先に考えなければならないのは、辺野古の海洋環境ではなく、普天間基地周辺の人々の安全性であり、生活環境だ。命の問題だ。
集会の参加者が、「辺野古新基地 NO!」のプラカードを掲げるのは勝手だが、その行動が普天間基地周辺の人々の安全な生活の実現を遅らせていることには思い至らないのだろう。