慰安婦問題で韓国の対応を引き出す手立ては
韓国の地裁が日本政府に、いわゆる元従軍慰安婦らへの損害賠償の支払いを命じた判決は、日韓両国間の緊張を高める新たな火種となった。当然のことながら日本政府は、慰安婦問題は解決済みとの立場で判決の受け入れを拒否し、一方韓国政府は「判決を尊重する」との姿勢を示している。旧朝鮮半島出身労働者、いわゆる元徴用工問題と並び、韓国政府は解決策を示すべきだ。
茂木外相は9日、外遊先のブラジルから韓国の康外交部長官と電話会談した。茂木外相は、韓国の地裁が日本政府に対して損害賠償の支払いを命じた判決を出したことが国際法上の「主権免除の原則」を否定しており、「日本政府として本判決は断じて受け入れられない」などと強く抗議した。
日韓両国の問題となっている元徴用工問題は1965年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決済みの話だが、茂木外相は、今回の慰安婦問題も同協定で解決済みであることや、さらに2015年の日韓慰安婦合意で「最終的かつ不可逆的な解決」を日韓両政府が確認していることを指摘し、韓国政府に対して国際法違反を是正するために適切な措置を早急に講じることを強く求めている。
このように、今回の判決は、他国の裁判権に国家は服さないという国際法上の「主権免除」の原則に反しているだけでなく、日韓請求権協定にも慰安婦合意にも逸脱している不法なものだ。
この地裁判決が確定し、韓国国内の日本政府の資産が差し押さえられたりすれば、日韓関係は決定的な状況となることは間違いない。
基本的には韓国政府が解決すべき問題だが、日本がそれを傍観していてもよいという訳ではない。もちろん、抗議もしているし、判決を受け入れることができないことを韓国政府に伝えている。
しかし、韓国政府は「政府は裁判所の判断を尊重し、慰安婦被害者の名誉と尊厳を回復するためにできる限りの努力を尽くす」(外交部)としており、現状では韓国政府が解決に向け動く見通しはない。
このため、日本政府としては「あらゆる選択肢を視野に入れて、毅然として対応していく」という方針を示しているが、どのような対応をするのか具体策は見えていない。
茂木外相は15日の記者会見で「『あらゆる措置』ということだが、まさにこれから外交的に、韓国に前向きな対応を引き出していかなければならない。そういう観点から、どういった措置が最も有効なのか。もちろん外交上のやり取りも続けるが、そういった中で決めていくということで、今後の対応策、これにも関連する問題であるので、具体的に、いつ何をやりますということについては、現段階で控えさせていただく」と述べている。
当面は、韓国側が何らかの適切な措置を取るかどうかが焦点になるだろうが、元徴用工裁判の例を見ても、対日関係に配慮して積極的な解決策を講じることは考え難いのも事実だ。そういう意味では、日本側が投げるボールが重要になってくる。
(terracePRESS編集部)