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2021.11.17

緊急事態条項の議論深掘りを

自民党の茂木幹事長が先ごろ、憲法改正について論議を加速し、緊急時に政府の権限を強化する「緊急事態条項」の創設を優先的に目指す方針を示した。新型コロナウイルス感染症に直面したことを受け、日本の緊急事態対応に限界があることが明らかになったためだ。しかし、これまでの憲法改正論議の中で、コロナ禍のようなケースでの対応が議論されていなかったことも事実。与野党が真正面から議論を進める必要がある。

 

茂木幹事長の発言は、読売新聞のインタビューでのもので、茂木氏は「新型コロナウイルス禍を考えると、緊急事態に対する切迫感は高まっている。様々な政党と国会の場で議論を重ね、具体的な選択肢やスケジュール感につなげていきたい」と述べている。

 

また、各党との協議では、「一般論で憲法を議論しようというよりも、どの項目の優先順位が高いかについてまとめ、国民に判断してもらう」とも述べている。

 

衆院選で憲法改正に前向きな日本維新の会や国民民主党が議席を増やしたことを踏まえ、改憲論議を加速させる一方、どの項目を改正するかも国民に判断してもらうということなのだろう。

 

確かに、新型コロナ禍では、他の国々で行ったロックダウンなど国民の私権制限が日本ではできないことが明らかになった。そのために、コロナ禍のような事態での政府の対応のあり方を議論することは不可欠だ。

 

これまで憲法改正については自民党が、改憲案として4項目を提起しているが、「緊急事態条項の創設」ももちろん、その1つに入っている。

 

しかし、これまでの議論は主に、大地震などの災害を前提としたものだった。自民党案の緊急事態条項では、内閣の事務を定める第73条に「(第1項)大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる」「(第2項)内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない」などを追加するというものだ。

 

これを読めば分かるように、まさに大災害に日本が見舞われた際の政府の権限を定めたものだ。もちろん、この条文案を準用することも可能なのかもしれないが、少なくとも他国が実施したロックダウンのような措置を政府がとれる道をきちっと議論することは必要だろう。

 

そうした議論をすることが、緊急時に国民がどのような対応を容認すべきか、国民の理解を深めることにもつながる。日本は阪神淡路大震災や東日本大震災などの大災害を経験したにせよ、戦後ずっと〝平和〟な時代を過ごしてきた。その国民の目を覚ましたのが新型コロナと言ってもいいだろう。緊急時の政府の役割、国民の対応のあるべき姿を、改憲論議の中で深める必要がある。

 

(terracePRESS編集部)

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