とても政策とは言えない野党、市民連合の「共通政策」
立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組の各党は先ごろ、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」、いわゆる「市民連合」の「衆議院総選挙における野党共通政策の提言」を受け入れた。この「政策提言」を媒介に各党が選挙協力などを進めることになるが、中身を見れば「政策の提言」などと、とても言える代物ではなく、これを政策と呼ぶのなら有権者への背信行為に等しい。
共通政策ではまず「この秋に行われる衆議院総選挙で野党協力を広げ、自公政権を倒し、新しい政治を実現することは、日本の世の中に道理と正義を回復するとともに、市民の命を守るために不可欠である」と強調している。
そして各党が合意した政策のトップに「憲法に基づく政治の回復」を掲げ、第1番目に「安保法制、特定秘密保護法、共謀罪法などの法律の違憲部分を廃止し、コロナ禍に乗じた憲法改悪に反対する」と記している。
ここでは、安保法制などを「違憲」と断じているがその根拠はまったく示されておらず、さらには「コロナ禍に乗じた憲法改悪に反対する」としている。
しかし、憲法改正は新型コロナウイルス感染症が蔓延する前から国会で議論されていたものだ。憲法改正論議の中でテーマの1つに「緊急事態条項」がある。これはもともと大規模な災害が起きた場合に政府の権限を強化し、緊急の政令制定や財政支出をできるようにしたり、国会議員の任期を延長できる規定を盛り込んだりすることが議論されていたものだ。もちろん、新型コロナを契機に緊急時の政府の権限のあり方や私権制限など新たな課題が浮上したが、新型コロナを契機に突如、憲法改正のテーマとなったわけではない。
もちろん、野党各党も市民連合はそんなことは百も承知だろうが、「コロナ禍に乗じた憲法改悪に反対」などと強調して、有権者を誘導しているのだ。
また、安全保障のあり方については「平和憲法の精神に基づき、総合的な安全保障の手段を追求し、アジアにおける平和の創出のためにあらゆる外交努力を行う」とあるだけだ。こうしたただのお題目で国の安全保障が確保できると考えているとすれば、野党各党は〝お花畑〟の中で政治をやろうとしているに等しい。
国民の生命財産、領土、領海、領空をお題目で守れると考えるならば、これもその根拠具体策を示すべきだろう。
また、「最低賃金の引き上げや非正規雇用・フリーランスの処遇改善により、ワーキングプアをなくす」「誰もが人間らしい生活を送れるよう、住宅、教育、医療、保育、介護について公的支援を拡充し、子育て世代や若者への社会的投資の充実を図る」と記しているが、これも抽象的な語句が並んでいるだけ。
最低賃金の引き上げは確かに必要だし、政府も取り組んでいるが、急激な引き上げは中小・零細企業の経営に影響するなどということは、まったく考慮していないのだ。
さらに、社会保障の財源となっていたり、社会保障目的税化されていたり、地方交付税の財源となっている消費税に関して簡単に「減税する」と記しているのだ。
これらをみれば、これは「共通政策」とはいいながら「政策」とも言えないことは明らか。有権者の目くらましを狙った〝共通プロパガンダ〟だ。
(terracePRESS編集部)