安定の政策で「新しい資本主義社会」つくる岸田政権
岸田政権は、「新しい資本主義の実現」を目指し、発足した。記者会見で岸田首相は「私の内閣は、新時代を共に創る、『新時代共創内閣』」と強調した。ポストコロナ、国際的にも潮流となっている新しい資本主義、「成長と分配」を進めるという点で、時代観のある政権といえる。とはいえ、分配の前提には成長が不可欠で、その点では安倍、菅政権の成長路線を発展させる安定した政策を実行することになる。
岸田政権が4日に閣議決定した「基本方針」では、「新型コロナウイルス対策」「新しい資本主義の実現」「国民を守り抜く、外交・安全保障」「危機管理の徹底」「東日本大震災からの復興、国土強靱化」の5つの柱を掲げている。
このうち新型コロナは別として注目されるのが「新しい資本主義の実現」だ。ここでは「富める者と富まざる者、持てる者と持たざる者の分断を防ぎ、成長のみ、規制改革・構造改革のみではない経済を目指すための『成長と分配の好循環』と、デジタル化など新型コロナによってもたらされた社会変革の芽を大きく育て、『コロナ後の新しい社会の開拓』をコンセプトとした、新しい資本主義を実現していく」と明記している。
「成長のみ、規制改革・構造改革のみではない経済」と強調しているところが岸田政権の特徴ということになるが、成長戦略については ①科学技術立国②デジタル田園都市国家構想③経済安全保障④人生100年時代の不安解消に向けた社会保障改革を掲げ、これまでの成長戦略と歩調を同じくしている。
一方、分配戦略については、①働く人への分配機能の強化②中間層の拡大③公的価格のあり方の抜本的見直し④財政の単年度主義の弊害是正に取り組むとしている。このうち「働く人への分配機能の強化」「中間層の拡大」については、まだ具体策は今後となるだろうが、しっかり成長させることにより、その果実を分配するという、成長と分配のバランスを取りながら国民生活の向上を図ることになる。
さらに基本方針では「交通・物流インフラなど地方を支える基盤づくりに積極的な投資を行うとともに、農業、観光、中小企業など地方を支える産業の支援に万全を期す」としており、地方や中小企業の活性化を強調している。
また「財政の単年度主義の弊害是正に取り組む」と打ち出したが、現実的には今でも毎年度、年度後半に補正予算を策定し、新年度予算につなげる方式を行っているし、「中長期の経済財政に関する試算」を行っている。これをさらに国民生活に資するように弊害を是正する必要はある。
基本方針でさらに注目すべきは「危機管理の徹底」だろう。これは「万一、大規模な自然災害やテロなど、国家的な危機が生じた場合、国民の生命と財産を守ることを第一に、政府一体となって、機動的かつ柔軟に全力で対処する。そのために『常に最悪を想定し』平素から準備に万全を期す」と記している。米国の「連邦緊急事態管理庁(FEMA)」のような組織整備が行われるかどうかは不明だが、「国民の生命と財産を守る」ための危機管理の徹底を打ち出したことは、歓迎すべきことだ。
岸田政権は、これまでの政権の従来路線と新しい政策を融合させ、安定的でかつ時代に即した政策を展開することになる。
(terracePRESS編集部)