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2021.12.06

単なる〝お願い〟ではない岸田首相の3%超の賃上げ要請

岸田首相は、分配政策を実現するため、産業界に対し来年の春闘での3%を超える賃上げを求めた。岸田首相は「成長と分配の好循環」を掲げており、賃上げにより消費の活性化を図りたい考えだ。同時に足元の景気対策や成長戦略なども進めており、総合的に経済の好循環を生み出す方針だ。

 

岸田首相は11月26日に開催した政府の「新しい資本主義実現会議」の第3回会合で「来春の労使交渉では、自社の支払能力を踏まえ、最大限の賃上げが期待される。(中略)民間側においても、来年の春闘において、業績がコロナ前の水準を回復した企業について、新しい資本主義の起動にふさわしい、3%超える賃上げを期待する。 政府としては、民間企業の賃上げを支援するための環境の整備に全力で取り組む」と述べ、産業界に3%以上の賃上げを求めた。

 

日本は自由主義経済社会だから、賃上げを決めるのは企業であることは当然だ。しかし、経済の主体である企業が賃上げしなければ、日本経済を活性化し、内需を拡大することはできない。そして「成長と分配の好循環」という「新しい資本主義」を実現することも不可能だ。内需を拡大するのは企業の責任でもある。

 

もちろん、首相も産業界にただ〝お願い〟しただけではない。保育士、幼稚園教諭、介護・障害福祉職員を対象に、継続的に3%程度引き上げる措置を来年2月から実施することを決めている。また、地域でコロナ医療などを担う看護職員を対象に、段階的に収入を3%程度引き上げるための措置を今年末の予算編成過程で決定する。

 

これだけではない。社員の給与を引き上げる企業への支援を強化するため、企業の税額控除率を抜本的に強化することをすることを検討し、税制改正大綱で決定する方針だし、赤字の中小企業の賃上げ支援に向けて、ものづくり補助金や持続化補助金で、赤字でも賃上げした中小企業への補助率を引き上げる特別枠を設ける。

 

また、人的資本への投資を強化するため3年間で4,000億円規模の施策パッケージを創設し、非正規雇用の人を含めて職業訓練、再就職、ステップアップを強力に支援する方針だ。さらに、政府調達では、賃上げを行う企業に加点するなど、調達方法の見直しを行うほか、中小企業の賃上げの環境整備のため、下請Gメンを倍増して取引適正化の監督を強化する。

 

民間主要企業の賃上げ率は、安倍首相が3%の賃上げを要請した2018年は2.26%だったが、19年2.18%、20年2%、21年1.86%と低下傾向が続いている。その一方で、企業が生み出した付加価値に対する人件費の割合を示す「労働分配率」を直近の数字でみると、大企業の45%に対し、中小企業は72%、小規模事業者では86%となっており、大企業の割合の低さが目立っている。

 

「新しい資本主義実現会議」に出席した経団連の十倉会長は終了後、「一方的な要請ではなく、それぞれの役割を果たしていこうということだったと理解している」と語っているが、問われているのは大企業の責任だ。

 

(terracePRESS編集部)

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