かまびすしいだけの子どもへの10万円給付
新型コロナウイルス対策、経済対策、子ども対策としての18歳以下の子どもへの10万円相当の給付が年内にもスタートする。やれ「5万円現金+5万円クーポンだ」とか「10万円の現金給付だ」とか、外野の議論はかまびすしいが、重要なのは趣旨に沿って速やかに支給することだろう。
政府は10万円相当の給付について10万円相当のうち5万円をまず現金給付して、5万円分を来春にクーポンで支給とするとしていた。ただ、自治体によっては特別な事情がある場合には10万円の現金給付を認めていた。
しかし、13日の衆院予算委で岸田首相は「自治体の判断によって地域の実情に応じて選択肢として年内からでも先行分のこの5万円の給付と合わせて10万円の現金を一括で給付する形で対策の実行することも選択肢の一つとしてぜひ加えたいと思っている」と述べ、これまでの方針を若干修正した。
「地域の実情」が必ずしも明確ではないし、これまでの「特別な事情」とどのように異なるのかも明示されていないが、自民党の高市政調会長の「現金10万円を一括給付すべきだといった指摘がある。準備を考えても、もうタイムリミットだと感じているが、総理の明確な見解を」との質問への答弁と言うことを考えれば、現金一括支給に道を開いたことは間違いないだろう。
しかし、5万円の現金に5万円のクーポンという当初の設計は妥当だ。もちろん、10万円の一括支給も妥当だ。どちらが適切で、どちらが不適切ということではない。
10万円のうち5万円をクーポン、それも子どもが利用する商品のクーポンであれば、確実に子どものために消費されることになる。家庭の事情はそれぞれ異なるから、可能な限り子どものための消費をしてもらえるような設計は必要だ。
しかし、クーポンを配布することには、クーポンの印刷費、郵送費など事務作業が膨大になり、経費が嵩むことは間違いない。実際、クーポンの配布などの場合は経費が967億円かかるとされ、これが批判の対象となった。
これに対して10万円の現金支給なら事務作業が格段にシンプルになり、経費も少なくできる。これが現金派の主張だが、すべて子どものために消費されるかどうか分からない。子どもの養育に充当させるという点を重視すれば、本来は全額がクーポンであってもいいぐらいだ。
問題は967億円の事務経費ということになるが、支給に要する費用のほか別途967億円が財政支出されるわけだから、この分の経済効果は確実にある。経済対策という視点で考えれば、逆に事務経費を減らせば、減らした分だけ経済効果はなくなる。
要するに、どのような効果を重視するかによって制度設計は異なってくるわけだ。経済効果だけを考えれば、退蔵される可能性がある現金よりクーポン、商品券などの方が確実であることは間違いないし、子どもがいる家庭の家計支援であれば、現金の方が使いやすいだろう。
いずれにしても、対象となる子どもがいない納税者からすれば、効果的な支給をしてほしいと思うところだ。
(terracePRESS編集部)