ウクライナ問題で外交活動強める岸田政権
ウクライナとロシア間の緊張が高まる中で、岸田首相や林外相による外交活動も活発化している。政府は、ロシアやウクライナなどに外交交渉による解決を求めているが、仮にロシアによる侵攻があれば、制裁を課すことも含めて、国際社会と連携して対応する構えだ。
ロシアは15日、ウクライナ国境付近の部隊の一部撤収を発表した。一方、バイデン米大統領は同日の演説で、ロシア軍によるウクライナ侵攻について「依然あり得る」「引き続き脅威だ」と述べ、警戒を緩めない考えを表明した。
ロシア軍の一部撤収は緊張緩和に向けた動きの兆しとも言えるが、北大西洋条約機構(NATO)の拡大停止などロシア側の条件はNATOには受け入れ難く、事態が沈静化するかは見通せていない。
このようなウクライナ情勢について岸田政権は積極的な外交を続けている。岸田首相は9日、カナダのトルドー首相と電話会談。両首脳はウクライナの主権、領土の一体性に対する一貫した支持を確認した。
15日にはウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談し、ウクライナ国境周辺のロシア軍増強の動きに対して重大な懸念を持って注視していることや、日本がウクライナの主権と領土一体性を一貫して支持し、力による一方的な現状変更は断じて認められないことなどを伝えている。
また首相は、ウクライナ側の要望を踏まえ、日本として1億ドル規模の借款による支援を緊急に供与する用意があることも表明している。
この日は、EUのフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長とも電話会談をしており、岸田首相が「価値観を共有する同盟国・同志国との連帯を示す観点から、日本企業が取り扱うLNGのうち余剰分を欧州に振り向ける」などと表明、同委員長から謝意が述べられた。
EUは輸入する天然ガスの約4割をロシアに依存しているが、ロシアがウクライナに侵攻した際の、米国とEUの経済制裁に対し、ロシアが報復としてEUへのガス供給を停止する可能性が指摘されている。このため、万が一の際に日本が欧州へ協力する考えを示したものだ。
さらに16日にはイギリスのジョンソン首相と電話会談し、緊張緩和に向けて外交努力を続け、(両国が)引き続き緊密に連携していくことで一致している。
このほか林外相も、日米外相会談や日米豪印外相会合などでウクライナ情勢をめぐり意見交換し、緊密な連携をすることなどを申し合わせている。
林外相は15日の記者会見で「現時点で我が国としては、外交交渉による解決を強く求めている。仮に、ロシアによる侵攻が発生した場合、我が国として制裁を科すことも含めて、実際に起こった状況に応じて、G7を始めとする国際社会と連携して、適切に対応していく」と述べている。ウクライナ問題で岸田政権は、国際社会の一員として、可能な限り西側諸国と連携していく考えだ。
(terracePRESS編集部)