防衛計画大綱の改定

安倍内閣は先ごろ、「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」を閣議決定した。メディアは海上自衛隊の「いずも」型護衛艦を戦闘機が発着できるように改修することや、2019~23年度の防衛費の総額を27兆4700億円程度にすることなどを取り上げ、早くも批判している。

 

毎日新聞は、12月19日付け朝刊の社説で「安倍政権2度目の防衛大綱 巨額の装備購入ありきか」と題し、冒頭「日本を取り巻く軍事的な環境の変化に合わせて防衛力のあり方を見直すことは必要だろう。ただし、政府が客観情勢の認識を国民と共有する努力をしてきたかは疑問だ」と、政府の「客観情勢の認識共有の努力」について疑問を投げかけた。

 

しかし、その一方で「(防衛計画の大綱を)前回からわずか5年で改定した理由については『想定したものよりも、格段に速いスピードで(安全保障環境の)厳しさと不確実性が増している』からだと説明されている。この間、中国の軍事力の強大化と北朝鮮の核・ミサイル開発による脅威が著しく増したのは間違いない。科学技術の進展により宇宙空間での人工衛星への攻撃や、情報ネットワークを破壊するサイバー攻撃なども想定しなければならなくなった」と、日本を取り巻く安全保障環境の変化について理解も示している。

「いずも」の改修についても「政府の憲法解釈で『攻撃型空母』の保有は専守防衛に反するとされてきた。一方、中国が空母の運用を始めたのだから、東シナ海や太平洋の離島を防衛するうえで空母があった方がよいという考え方も否定はできない。脅威の態様によって専守防衛の形が変わる部分もあるだろう」としながら「だが、普段は対潜水艦哨戒ヘリを搭載し、戦闘機は必要な場合だけの運用だから攻撃型空母ではないという政府の説明はごまかしに等しい」との指摘にとどまっている。

 

これに対し、ここでもまた驚かされるのが朝日新聞だ。同じく19日付け朝刊の社説は「軍事への傾斜 一線越えた」と題し、「こうした防衛政策の転換をさらに推し進めれば、不毛な軍拡競争に道を開きかねない」と批判している。

 

「防衛政策の転換をさらに推し進めれば(略)軍拡競争に…」としている限りは、今回の大綱や中期防の改定を指してはいない、などという揚げ足取りは措いておくが、なにしろ驚くのが、この社説では、日本を取り巻く安全保障環境の変化について、ほとんど言及していないことだ。

 

毎日新聞が指摘する「中国の軍事力の強大化と北朝鮮の核・ミサイル開発による脅威が著しく増したのは間違いない」といった分析は全くないのだ。

 

確かに社説は「大綱の主眼は、北朝鮮ではない。軍拡を進める中国の脅威への対処にある」と指摘しているが、これだけだ。

 

安全保障は他国の軍事的脅威に備えるためのものであり、その他国の軍事的脅威の現状をほとんど無視して、自国の安全保障政策を批判するというのは、どのような神経をしているのか疑いたくなる。

 

ましてや、この社説は「軍事に過度に頼ることなく、外交努力を通じて緊張を緩和し、地域の安定を保つ―。いま必要なのは、総合的な安全保障戦略にほかならない」と結んでいるが、朝日新聞は、戦後の日本が、ただの一度も軍事に頼ったことがないことすら認識していないらしい。