政府がヤングケアラー支援策を促進
病気の家族の介護や世話を担う18歳未満の子どもを「ヤングケアラー」と呼ぶ。なかなか社会の中で表面化しにくいが、こうした子どもたちがいるのも事実。政府は、ヤングケアラーの支援に向けた文科、厚労両省の連携プロジェクトチーム(PT)を設置し、このほど具体的な支援策を盛り込んだ報告書をまとめた。国がヤングケアラーに特化した支援策を取りまとめたのは初めて。
ヤングケアラーは、家族にケアを要する人がいる場合、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどをしている18歳未満の子どもをいう。
例えば、障害や病気のある家族に代わり、買い物や料理、掃除洗濯などの家事や、その家族の入浴やトイレの介助などをしたり、家族に代わり、幼いきょうだいの世話をしたりするなど、さまざまな場面が想定されている。
では、こうしたヤングケアラーはどのくらいいるのか。厚労省の「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」によると、世話をしている家族が「いる」と回答した子どもは、中学2年生で 5.7%、全日制高校2年生で 4.1%だったという。
その中で、自分のやりたいことへの影響はないと回答した子どもが半数いる一方で、家族の世話を「ほぼ毎日」している中学2年生、全日制高校2年生は5割弱、一日平均7時間以上世話をしている中学2年生、全日制高校2年生も約1割存在した。
特に問題なのが「本人にヤングケアラーという自覚がない者も多く、子どもらしい生活が送れず、誰にも相談できずに1人で耐えている状況がうかがえる」ということだ。
このためPTの報告書では、今後取り組むべき施策として①早期発見・把握 ②支援策の推進③社会的認知度の向上の3つの柱を掲げた。
「早期発見・把握」のため、福祉、介護、医療、教育などの関係機関や専門職、ボランティアなどへのヤングケアラーに関する研修、学ぶ機会の確保や、地方自治体の現状把握を推進する。
また「支援策の推進」では悩み相談を行う地方自治体の事業の支援のほか、家族介護で、子どもを「介護力」とせずに居宅サービスなどの利用について配意するなど地方自治体へ周知する。また幼いきょうだいをケアするヤングケアラーがいる家庭に対する支援については今後検討する。
さらに、ヤングケアラーは、その名称や概念自体の社会的認知度が高いとはいえない状況で、子どもはもちろん、周囲の大人が理解を深めることが必要な支援につながる。このため「社会的認知度の向上」として、来年度から3年間を「集中取組期間」とし「ヤングケアラー認知度向上キャンペーン」(仮称)を実施するという。
報告書は「子どもらしい暮らしができずに辛い思いをしているヤングケアラーにとって青春は一度きりであり、本報告書に記載されている施策について、スピード感を持って取り組む」と述べている。両省は今後、2022年度予算概算要求への関連事業費計上を目指すが、予算を確保し、スピード感を持った対策を実行することが不可欠だ。
(terracePRESS編集部)