社会課題を成長のエンジンとする「デジタル田園都市国家構想」
政府の「デジタル田園都市国家構想実現会議」は先ごろ、「デジタル田園都市国家構想基本方針」をとりまとめた。「デジタル田園都市国家構想」は「新しい資本主義」の重要な柱の一つで、持続可能な経済社会の実現を目指すもの。地方の社会課題を解決することで、日本の新しい成長がスタートする。
「デジタル田園都市国家構想」は、デジタル化の恩恵を国民や事業者が享受できる社会、いわば「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指すものだ。これにより、これまで日本の隘路だった東京圏への一極集中の是正を図り、地方から全国へとボトムアップの成長を推進する。
具体的な課題解決の目標としては「地方に仕事をつくる」「人の流れをつくる」「結婚・出産・子育ての希望をかなえる」「魅力的な地域をつくる」「地域の特色を活かした分野横断的な支援」
「地方に仕事をつくる」ための具体策としては「ベンチャー投資や社会的投資の拡充・強化、大学・高専などの連携」を促進し、スタートアップが容易になるようにする。また、「農機等の遠隔操作、農作業の軽労化、食品産業との連携強化」などスマート農林水産業の活性化を促進。
また観光アプリの活用、決済データを活用したマーケティングへの支援など観光DXを促進し、地域の重要な産業となっている観光業のデジタル化も進める。
また、地方活性化を目指すために一定程度以上の人口を地方で維持することが重要で、都会から地方への人の流れを生み出し、にぎわいの創出や地域の取組を支える担い手の確保を図ることが不可欠となる。
そのため「転職なき移住」を掲げ、地方創生に資するテレワーク(地方創生テレワーク)の推進、企業版ふるさと納税などを活用したサテライトオフィス整備など、地方への人材の還流を促進する。
また、地方大学の振興や地方へのサテライトキャンパスの設置推進、産学官の連携による地域産業振興・雇用創出、高校の機能強化なども展開する方針だ。
「デジタル田園都市国家構想」は、地方の社会課題を障害物と捉えるのではなく、成長のエンジンへと転換していくものだ。官が呼び水となって、民間の投資を集め、官民連携で社会課題を解決し、成長を実現していく。さまざまな社会課題をブレークスルーし、地方活性化を加速することがデジタル田園都市国家構想の意義だ。
岸田首相は基本方針について「基本方針の策定をもって一つの区切りを迎え、今後は、デジタル田園都市国家構想の実現に向けた取組を政府一丸となって推進し、目に見える成果を挙げていく時だ」と述べている。
これまで難しかった新しい地方への人の流れを作り、地方を活性化させることで日本の成長を実現する。そうした新しい社会づくりが本格的なスタートを切る。
(terracePRESS編集部)