迅速に進める必要があるスタンド・オフ防衛力
北朝鮮が弾道ミサイルを相次いで発射している。9日に短距離弾道ミサイル2発を発射し、今年に入ってからの発射は、巡航ミサイルを含め25回目となった。その中には日本列島を飛び越えた中距離弾道ミサイルもあるなど、日本の安全保障が揺るがされる事態となった。国民の生命、財産を守り、平和な暮らしを守るためにはスタンド・オフ・ミサイルの導入などが不可欠だ。
スタンド・オフは、一般的には「離れている」といった意味で、日本への攻撃を効果的に阻止するため、侵攻する相手方の艦艇などに対して、脅威圏外の離れた位置から対処することが必要で、そうした能力は「スタンド・オフ防衛能力」と呼ばれている。
政府は、2020年12月の閣議決定で、車両や艦艇、航空機といった多様なプラットフォームからの運用を前提とした陸上自衛隊の「12式地対艦誘導弾」の能力向上型の開発を行うことを決定。
防衛省は来年度予算案の概算要求で、いわゆる「反撃能力」も念頭に「スタンド・オフ・ミサイル」の量産開始などを盛り込み、「12式地対艦誘導弾」の改良型と、島しょ防衛に使う「高速滑空弾」の量産を開始する方針だ。
また、配備を断念した新型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替策として建造するイージス・システム搭載艦を、弾道ミサイルだけでなく、極超音速滑空兵器にも対応できるようにするという。
北朝鮮は2019年5月以降、低空を変則的な軌道で飛行する弾道ミサイルを開発し発射。2021年には「極超音速滑空飛行弾道」の開発、導入も表明している。こうしたミサイルは、ミサイル防衛網を突破することを意図しており、日本の防衛力が相対的に脆弱化する。
北朝鮮は4日に中距離弾道ミサイル1発を発射し、青森県上空を通過した後に太平洋上に落下している。ミサイルの推定飛行距離は約4600キロに達し、北朝鮮が発射したミサイルとしては過去最長の距離となった。
この際、政府の警報システムのJアラートが誤って東京都島しょ部なども対象エリアとして送信され、岸田首相が国会で「重く受け止める」とコメントする事態となった。
確かに、国民の安全を守るためには、正しい情報を迅速に提供することが重要だ。しかし、Jアラートは他国の脅威から日本を守るための本質的な問題ではない。重要なのは、そうした脅威からどのような手段で国民を守るのかということだろう。
だが、国会で野党はJアラートの誤送信を取り上げても、国民の安全を確保するための手段についてほとんど議論しない。
スタンド・オフ防衛力の強化は抑止力の強化だ。スタンド・オフ・ミサイルの多様な運用を可能にすることで、日本にミサイルの脅威を与える相手の対応をより困難にでき、その結果、攻撃に対する抑止力を高めることになる。
そして、そうした能力の確保には財政資金も必要となる。日本が置かれている状況を国民がしっかり認識し、具体的な防衛策を確立していくことが求められている。
(terracePRESS編集部)