農林水産物などの輸出を5兆円に
政府は先ごろ、農林水産物などの1年間の輸出額を、2030年に5兆円とする新たな目標を決定した。中間目標として2025年には2兆円を掲げている。
政府は「(農林水産物などの輸出は)まだまだ大きく伸ばすことができる」(菅官房長官)として、政府内に輸出手続きを一元的に担う組織を発足させて体制を強化し、目標の達成を目指す方針だ。
これまで政府は、2019年の目標輸出額を1兆円としていた。実際の輸出額は前年比0.6%増の9,121億円で目標値には届かなかったが、安倍政権発足前には年間約4,500億円に過ぎなかったことや7年連続で過去最高を更新したことを考えれば、政策の効果が発揮され、順調に拡大したと言える。
日本の生産者が高齢化する一方、世界のマーケットは拡大することが見込まれている。新型コロナウイルスの世界的な拡大により、世界の消費も冷え込んでおり、目標達成に向けたスタートから厳しい状況となるが、30年に5兆円と言う高い目標を掲げることは、国内農業を維持、発展させ、耕作地を守るための意欲的な挑戦となる。
この目標達成のカギとなるのは、輸出の促進体制の確立だが、農林水産省に輸出本部を設置する。この輸出本部が、これまで各省庁に分かれていた輸出先国との国際交渉や加工施設の認定などを統括し、輸出拡大に向けた各省一体となった体制を構築するという。
また、青果物は、水田からの転換や省力樹形などを導入することで生産を拡大したり、畜産物なら、生産基盤を強化したりして和牛を大幅に増産するなど、生産基盤の抜本的強化による生産量の拡大を進める。
コメも、海外の日本食レストランやおにぎりビジネス向けに日本産米の魅力をPRし、
海外需要を拡大する一方で、輸出向けのコメの作付けを拡大するという。
江藤農水相は記者会見で、新たな目標について「日本のマーケットが小さくなっていく以上、外にしっかりとしたマーケットを確保し、プロモーションをしていかないと、日本の生産基盤を守れないし、439万7千ヘクタールの耕地面積も守っていけない。荒廃農地も9万2千ヘクタールある。これは優良農地として復活させていかなければならない。そういった大きな政策目標を達成するためには、その一助として輸出は大きなきっかけとなるものだ」と述べているが、農林水産業の輸出拡大は、まさに農林水産業を基盤とする地域を守るためのものなのだろう。
そういう意味では、農林水産業・食品の輸出は、日本の地域を支える重要な政策と考えられる。
(terracePRESS編集部)