それでも本予算に新型コロナ対策をという愚考
2020年度政府予算が先ごろ成立した。一般会計総額は102兆6580億円で過去最大となり、19年度当初予算に比べ1.2%増となった。
予算の柱は「社会保障の充実」と「経済対策」。全世代型社会保障制度の構築に向け、消費税増収分を活用し、来年4月からの高等教育の無償化や予防・健康づくりの取組など医療・介護分野の充実を実施する。このため、社会保障費の総額は5.1%増の35兆8608億円となっている。また、「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」を実行するため1兆1432億円も計上されている。
防衛費は、宇宙やサイバーなど新領域での防衛能力を強化するため1.1%増の5兆3133億円となった。
もちろん、20年度予算案には新型コロナウイルス対策は盛り込まれていない。新型コロナ対策としては2月13日に第1弾として国内感染対策の強化や水際対策などを柱に総額103億円の対策を策定。
続いて第2弾として、①感染拡大防止策と医療提供体制整備 ②学校の臨時休業への対応 ③事業活動の縮小や雇用への対応 ④事態の変化に即応した緊急措置-などを中心に、4000億円の財政措置と金融総額1.6兆円の対策を策定している。
これらの対策には、雇用対策や学校の休業対策なども入っているが、メインは感染防止のための対策だ。このため、政府は現在、現金給付も含めて大型の経済対策を策定しているわけだ。
国会で20年度予算案が審議されている中で、野党からは予算にコロナ対策が入っていないことの批判が出ていたが、予算を組み替える作業を行い、もし年度内成立ができない状況となれば別途、暫定予算を組まなければならなくなり、国民の生活に多大な影響も出ていただろう。
また、新型コロナの経済への影響が日々変わる中で、機動的な対応をできなくなる。
結局、当初の予算案を成立させ、対策は補正予算を編成するという手法がベストなのだ。
しかしながら、そうした背景も分からずに、予算に新型コロナによる経済対策を盛り込むべきだったという主張も依然として散見される。
毎日新聞は28日朝刊の社説で「本来は当初の政府案を組み替えてコロナ対策費を可能な限り盛り込むべきだった。その方が国民に分かりやすいし、海外にも日本の取り組みを発信できただろう。与野党の審議を通じて、適正な予算にしていく。そもそもそれが国会の役割だ。ところが野党の指摘に応じて政府案を修正するのは政権にとって好ましくないといった意識が今も残っている。新型コロナという深刻な事態に即応できない硬直さが改めて露呈したと言っていい」などと論じている。
否、〝論じている〟などというレベルのものではない。「国民に分かりやすい」のも、また「海外にも発信できる」のも、本予算とは別に大型対策として国民、海外に示すことなのだ。メディアでありながら、訴求の仕方も理解できないのだろうか。もっとも、これは本質的なことではない。
問題は、政府が新型コロナ対策第1弾、第2弾を策定し、そこから大型の経済対策の策定に着実に進んでいることに毎日新聞が目をつぶっていることだ。
感染者、死亡者がまだ少なかった初期の第1弾、感染拡大阻止のための学校休業などを要請した2月下旬から3月上旬への影響への対応の第2弾、これまでの期間や今後の展開に対応するための大型対策と、まさに即応し、機動的に対処してきたのだ。
(terracePRESS編集部)