日本も無縁でないウクライナ侵攻
ウクライナへのロシア軍の侵攻は、国際社会に大きな衝撃をもたらした。軍事力などの力によって現状や秩序を一方的に変更するという行為は決して許されるものではない。今回は、ウクライナという日本から遠く離れた地域での出来事だが、アジアでも同様な事態が発生しないという保証はどこにもない。日本の安全保障を確保するためにも、ウクライナで発生した事態を真剣に受け止める必要がある。
岸田首相は、ロシアのウクライナ侵攻を受けて25日に行った臨時記者会見の中で「今回のロシアによるウクライナ侵攻は、欧州のみならずアジアを含む国際社会の秩序に影響する大変深刻な問題と認識している。アジアを含む他の地域においても力による現状変更、これは決して許されないという意志をG7をはじめとする国際社会と連携する形で、共に強く発信することが重要で、今後、アジアを含む他の地域においても今回のような国際法違反、あるいは国連憲章に反するような行為を抑制することにつながると信じる」と述べている。
アジアでは現在、中国が急速に海洋進出をはかっており、南シナ海の南沙諸島などでは中国による一方的な人工島の建設などがすすめられてきた。南シナ海は北東アジアとインド洋を結ぶアジアの海上輸送の大動脈であり、その海洋秩序の維持が懸念されている。
また、中国と台湾を隔てる台湾海峡の緊張も高まっており、日本の尖閣諸島周辺の海域では中国の公船が日常的に活動し、領海侵入も頻繁に行われている。
アジアは現在、こうした緊張した状況にあり、そうした現状変更の試みを抑止するために、日本、米国、オーストラリア、インドによる「4カ国戦略対話」(クアッド)という国際的な枠組みが作られたのだ。
また、米国、英国、オーストラリア3カ国による安全保障協力の枠組み(オークス)も構築されている。こちらは、クアッドと異なり軍事的同盟の色彩が強い枠組みだ。
クアッドやオークスといった国際的な協力体制が作られる一方、ドイツやフランスなど欧州各国は個別にインド太平洋域に艦船を派遣し、海洋秩序の維持に努めている。もちろん、そこでは海上自衛隊との共同訓練なども行われている。
こうした取り組みが、岸田首相が会見で述べた「力による現状変更は決して許されないという意志」の国際社会による表明となる。
もちろん、そうした国際社会との連携をさらに進めるためには、日本の努力も不可欠となる。
自民党安保調査会長の小野寺元防衛相は民放テレビ番組でウクライナ情勢に関連し「この問題は必ず日本に影響する。自国は自国で守るというスタンスがなければ、日本もウクライナと同じようなことになる」と述べている。
今回のロシアによるウクライナ侵攻では「ハイブリッド戦」が行われていると言われている。軍事的な行動に加えて「サイバー戦」や「情報戦」などを組み合わせた戦略だ。小野寺氏は「東アジア、台湾ではすでにハイブリッド戦が行われていると考えるべきだ」と指摘しているが、日本ではまず国民が自国の安全保障をどうしていくのかということを真剣に考えるべき時代になっていることを認識する必要があるだろう。
(terracePRESS編集部)