「頼もしい国、いい国を残す」これが安倍首相の真実
内閣官房参与の谷口智彦氏の著書「安倍晋三の真実」(悟空出版)を読むと、思わず「なるほど!」と思わせられる。
谷口氏は慶応大学大学院の教授で、教員の仕事をしながら、安倍首相の外交に関するスピーチ原稿などのライターとして首相官邸4階の自室にこもって安倍首相を毎日〝観察〟している。なぜ〝観察〟するのか?
この点について谷口氏は「スピーチライターなる者は、彼または彼女一個の考えで原稿を書くわけではありません。あくまでリーダーの考えを自分の中に血肉化し、その上で書くことが求められます。そのためには、私の場合でいえば総理の目線に立って書くことが絶対的な必要条件となりますし、総理の発想、思想、好み、癖などについて十分に理解している必要があります」と説明している。
スピーチを書くからこそ安倍氏の近くにおり、安倍氏の近くにいるからこそ、首相としての安倍氏の考えが分かる。そんな谷口氏の見方だからこそ〝真実〟の安倍氏の姿が浮かび上がってくる。
さて、安倍晋三という首相は、多くの人が一つのイメージを持っている。谷口氏も本書の中で「安倍さんが本当にやりたいのは憲法改正や安全保障のいろいろな問題なのだろう、ともするとそちらにばかり目が向いて、経済がおろそかになるのじゃないかと、内外の投資家などに、しばしば尋ねられます」と述べているが、優先順位が憲法、安全保障にあるというのは、多数の人が抱いている安倍観だ。
しかし、谷口氏はこうした見方について「クルマを運転して、長いトンネルに入ります。自分のヘッドライトは、真っ直ぐ前を照射している。左右の路面と側面、天井のライトは、一つの光の筋になり、やはり前方一点に向かって収束するかに見えます。すべての光の束が、やがて結ばれる場所。それがトンネルの出口です。私は安倍総理のアタマには、こんな景色が見えているのだと。一言でいえばそれは『あれも、これも、それからあれも』、みんな日本を強くするため必要だと思って邁進する人に見える絵です。将来世代に、頼もしい国と経済を残すため、走り続けているときの景色なのだ、と、そう思うのです」と説明。
続いて「ですから、一に経済、二に経済、三、四がなくて、五に経済だとばかり、安倍総理が経済のことを重視するのは、『あらゆることを試みて、日本を強くし、若い世代に引き継ぎたい』と言っていることとほぼ同義なのです」「いったい何を、本当にしたいのかと安倍総理に聞けば、10年先、20年先、いやもっとずっと長く、日本が頑健な、強い国でいられるよう、今のうちにできることをしたいと答えるはずです。そう答えるとき、憲法だけ、防衛力だけ、考えているはずはありません。全部繋がっている。その土台が経済力なわけです」と解説している。
「強い国」などというと、また批判ありきの人々は、憲法改正などと結び付けて、さも軍国主義の復活というような宣伝を繰り広げるだろうが、ここでいう強い国は、頼もしい国であり、いい国であり、国民が幸せになる国だ。憲法改正、防衛力の強化のために首相をやっていると思われるのなら、安倍首相にとってこんな悲劇的なことはないだろう。