メディアが報じない画期的な雇用対策
政府が策定した「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」をめぐって民放テレビなどを筆頭に30万円の給付金についての議論ばかりが目に付くが、雇用を守るための「雇用調整助成金」の拡充についてはあまり報じられていない。
安倍首相が4月7日の記者会見で「雇用と生活は断じて守り抜く」と発言しているが、実は多くの労働者にとって重要な対策となるのは、この雇用調整助成金だ。
新型コロナウイルス感染防止のため企業が臨時休業するケースが増えるが、労働基準法では、企業は労働者に対し賃金の最低6割以上の休業手当支払うことを定めている。
この休業手当が払えなければ企業は労働者を解雇してしまうが、それを防ぐのが「雇用調整助成金」で、国が休業手当の一部を肩代わりする。
もちろん、助成金を受けるにはさまざまな条件がある。例えば、制度の原則的な要件として、生産指標要件なら「3カ月10%以上低下」とか、対象者としては「雇用保険被保険者」などとなっている。
しかし、今回の対策では、生産指標要件を緩和し「1カ月%以上低下」としたし、雇用保険被保険者ではない労働者の休業も対象に含めている。これにより週20時間未満のパートやアルバイトなども対象となる。
助成率は中小企業であれば5分の4、大企業は3分の2に拡充したが、さらに解雇などを行わない企業なら中小で10分の9、大企業で4分の3を助成する。
また、制度本来の要件では、対象者は雇用保険被保険者といっても、6カ月以上の被保険者期間が必要だったが、6カ月未満も認めることで新規学卒採用者なども対象としている。
こうした拡充措置をみれば、今回の雇用対策が画期的なものだということが分かるだろう。
例えば、月額30万円の給料の人がいた場合、単純に日割りしたと考えれば、1日1万円となる。休業手当を最低の賃金の6割と仮定すると、企業は1日6000円の休業手当を払うことになるが、中小企業で解雇しない会社だったら、5400円分は助成金で賄えるということになる。
休業する企業がこうした制度を活用すれば、負担が少ないままで雇用を維持することが可能となるのだ。それもパートやアルバイトにも支払えることになるわけだ。
民放テレビのコメンテーターなどは緊急経済対策について批判ばかりしているが、雇用を守るためのこうした取り組みをしていることを知っているのだろうか。
(terracePRESS編集部)